「PPS保持器付き円筒ころ軸受」を開発 ~耐熱性、耐食性を向上させ適用範囲を拡大~
- 商品・技術
株式会社ジェイテクトは、従来よりも耐熱性、耐食性を向上させた「PPS※1保持器付き円筒ころ軸受」を開発しました。
樹脂製保持器は、炭素鋼や黄銅等の金属製保持器と比較して、軸受の高機能化(軽量、低トルク、潤滑性向上)に貢献しますが、従来のポリアミド材では耐熱性や耐食性に限界があり、たとえば、高温油中で使用される油圧機器(ポンプやモーター)や冷媒ガスにさらされるコンプレッサなどでの使用が困難でした。
そこで、PPS材を使用した「PPS保持器付き円筒ころ軸受」を開発することで、これらの環境下への適用と、高機能化(軽量、低トルク、潤滑性向上)を両立させました。
※1 Polyphenylene Sulfideポリフェニレンスルファイド。合成樹脂の一種。
1.開発の背景
従来、円筒ころ軸受用保持器の材料には炭素鋼(鋼板)や黄銅が使用されていましたが、近年は、軸受の高機能化を目的に、より軽量で潤滑性や低トルク性能も高い樹脂材を使用するケースが増えてきました。
しかし、一般的な樹脂保持器の材料であるポリアミド材(66ナイロンや46ナイロン)は耐食性や耐熱性に限界があり、高温油中やコンプレッサ等の冷媒ガス環境下での使用に制約があります。
これまでこれらの環境においては従来の炭素鋼や黄銅の保持器を使用せざるを得ませんでしたが、厳しい環境下での使用においても軸受の高機能化ニーズが高まってきたことから、樹脂製保持器の適用に向け開発に着手しました。
2.開発品の特長
ジェイテクトは、ポリアミド材よりも耐食性、耐熱性ともに高いものの、成形が困難であったPPS材に注目。2015年3月にジェイテクトが開発した「PPS保持器付きスラスト玉軸受」で量産実績を積むなど、型成形技術も向上していたことから、この技術を円筒ころ軸受においても転用することに成功し、樹脂保持器の材料にPPS材をラインナップし高温性や耐食性を向上、樹脂保持器の適用範囲拡大を実現しました。
本製品を、油圧機器・コンプレッサなどへ採用することでコンポーネントの軽量、効率化に貢献します。
(1)耐熱性、耐食性
従来の樹脂材料(ポリアミド)よりも耐熱性、耐食性に優れるPPSを保持器材料に採用
(2)軽量化
- 黄銅製保持器に比べ、保持器重量を約86%軽量化
- 軸受全体としては約11%の軽量化を実現
(3)低トルク化
- 黄銅製保持器に比べ、起動トルクを約10%低減
3.販売計画
【売上目標】 1億円/年
【販売先】 油圧ポンプメーカー など
4.製造工場
徳島工場、国分工場、ダイベア株式会社 (ジェイテクトグループ)