コラム
ベアリングとは?軸受の基礎知識
- #1 ベアリングとは?
ベアリング(bearing)とは、どのような機械部品かご存じでしょうか?実は "機械産業のコメ"と呼ばれるほど、あらゆる機械に使用されている部品です。それほど重要な部品ですが、見えない部分で動いているため、機械関係のお仕事をしていない方には「ベアリングのことをよく知らない」という方が多いのではないでしょうか。
このベアリングコラムを通じて、ベアリングの基本を学んでいただき、ベアリングを正しく選んでいただけるようになっていただきたいと思います。
1.ベアリングとは?
ベアリングとは、"モノの回転を助ける部品"であり、日本語では軸受(じくうけ)や転がり軸受と呼ばれます。その名前が示す通り、主に機械の中で回転する"軸"を支える部品です。
図1に軸に組み込まれたベアリングを示します。
図1 ベアリングと軸
ベアリングが使用される機械は、たとえば自動車や航空機、発電機など。私たちの暮らしの身近なところでは、冷蔵庫や掃除機、エアコンといった家電製品にも使用されています。
それらの機械の中で、車輪・歯車・タービン・ローターなどを取り付けた回転する"軸"を支え、よりなめらかに回転することを助けています。
このように、あらゆる機械には回転する"軸"が多くあり、必ずと言っていいほどベアリングが使用されることから、"機械産業のコメ"と呼ばれるようになりました。一見すると地味な部品だと思われるかもしれませんが、これがないと私たちの暮らしが成り立たないほど非常に重要なものなのです。
2.ベアリングの役割
機械がなめらかに動くために、ベアリングはどのような役割を果たしているのでしょうか?
次の二つの大きな役割があります。
≪役割1≫摩擦を少なくし、回転を滑らかにする
回転する"軸"と、回転を支える部分には、必ず摩擦が発生します。ベアリングは、この回転する"軸"と、回転を支える部分との間に使用されます。
ベアリングの働きによって摩擦 を少なくし、回転を滑らかにしてエネルギー消費量を少なくする。これこそが、ベアリングの最大の役割です。
≪役割2≫回転を支える部分を守り、回転する"軸"を正しい位置に保つ
回転する"軸"と、回転を支える部分との間には、大きな力がかかります。ベアリングは、この大きな力によって回転を支える部分が故障することを防ぎ、回転する"軸"を正しい位置に保つ役割を果たします。
これらの役割によって、私たちは長時間にわたって繰り返し機械を使用できるのです。
3.ベアリングの構造と仕組み
次にベアリングの構造と仕組みをご紹介します。
図2に示すように、ベアリングは次の部品によって構成されています。
①軌道輪(軌道盤):リング状の部品で、内輪と外輪があります。
②転動体:軌道輪(軌道盤)の間を転がる部品(転動体には"ボール(玉)"と"ローラー(ころ)"があります)
③保持器:転動体どうしが接触しないように一定の間隔に保つ部品
その他にも、シールやグリスも使用されて、上記の3つが組まれてユニットとして出来上がります。
図2 ベアリングの構造
ベアリングの仕組みは、「軸」が回転すると、軌道輪の間に配置された複数個の「転動体」が転がります。
転動体が転がるベアリングは摩擦が小さく、軸を回転するエネルギーの消費量を少なくすることができます。
ベアリングの仕組み・構造について、詳しくはこちらをご覧ください。
≫ベアリングの仕組みって?~摩擦を減らす構造と部品の役割~
4.ベアリングの種類
ベアリングにはさまざまな種類があります。ボールを使用したものをボールベアリング、ころを使用したものをローラーベアリングといいます。
ベアリングは支えることのできる力(荷重ともいいます。)のかかる方向と転動体の形状により、ベアリングの種類を分類することができます。
図3に示すように「軸に対して直角方向の力」を支(ささ)えるベアリングを、ラジアルベアリングといいます。
図3 ラジアルベアリングと力のかかる方向
一方、図4に示すように「軸に対して平行(軸と同じ)方向の力」を支(ささ)えるベアリングを、スラストベアリングといいます。
図4 スラストベアリングと力のかかる方向
その他のベアリングの種類について、詳しくはこちらをご覧ください。
≫ベアリングの違いって?~ベアリングの種類と特長~
5.ベアリングの使用箇所
ベアリングは自動車をはじめ、エネルギー/モノの材料を作ったり、モノを加工する産業機械などに多く使用されています。
ここでは、次の3つ分野で使用されるベアリングの代表的な使用例をご紹介します。
・自動車用ベアリング
・産業機械用ベアリング
・特殊環境用(真空、高温、非磁性など) ベアリング
1) 自動車用ベアリング
一般的な自動車には約100個のベアリングが、高級自動車では、なんと約150個ものベアリングが使用されています。
図5に示すように、自動車の各装置にベアリングが使用されています。また、使用箇所に応じて、さまざまな種類のベアリングが使用されています。
図5 自動車用ベアリングの代表的な使用箇所
記号の説明
①動力装置(オルタネータ、ターボチャージャーなど)
②操舵装置(ステアリング、ポンプなど)
③動力伝達装置(トランスミッション、デファレンシャルギアなど)
④走行装置(ホイール、サスペンションなど)
自動車用ベアリングについて、詳しくはこちらをご覧ください。
≫『ベアリングの用途について(前編)~自動車のこのようなところで使われています~』
≫産業分野別:自動車ページ
また、さまざまな自動車用ベアリングの特長をご紹介するこちらもご覧ください。
≫自動車補修用部品ページ
2) 産業機械用ベアリング
近年、温室効果ガスの削減のため、図6に示す自然エネルギーを活用する多くの風力発電機が設置されています。
図6 風力発電機用ベアリング
風力発電機は風の力を受けて主軸が回転し、その回転を発電機に伝えて発電をします。
主軸を支えるベアリングは、羽根と回転部分の重さに加え、大きさと方向が不規則に変化する風の力も支えます。
そのため、大きな力を支える主軸には、図7に示す大形ベアリングが使用されています。
図7 風力発電主軸用大形ベアリング
その他の産業機械に使用されているベアリングについて、詳しくはこちらをご覧ください。
≫『ベアリングの用途について(後編)~モノづくりに使われるベアリング~』
3) 特殊環境用(真空、高温、非磁性など)ベアリング
近年は科学技術の進歩に伴って機械の性能が大幅に向上し、また多くの新しい機械が生み出されています。
これらの機械のなかには、従来からの一般的なベアリングではなく、「材料と潤滑剤を工夫したベアリング(ジェイテクトでは特殊環境用ベアリングといいます)」が使用されています。
ここでは、医療機器に使用される特殊環境用ベアリングをご紹介します。
さまざまな医療機器のうち、図8に示すMRI(磁気共鳴診断装置)は、強い磁気の力を利用して臓器や血管を撮影して、身体の内部を検査します。
図8 MRI(磁気共鳴診断装置)
一般的なベアリングを強い磁気が発生するMRIのもとで使用すると、磁場が乱れ精密な検査ができません。
また、ベアリングがなめらかに回転しなくなります。
このため、強い磁気の影響を受けない非磁性のベアリングが、MRI用に使用されています。
このような特殊な環境で使用されるベアリングについて、詳しくはこちらをご覧ください。
『材料と潤滑剤を工夫したベアリング ~身近なところで使われるベアリング~』
ここまでで、読者の皆様には、私たちの暮らしに欠かすことのできない多くの機械にベアリングが使用されていることがおわかりいただけたと思います。
最後に、多くの機械に使用されるベアリングをどのようにして選ぶかをご紹介します。
6.ベアリングで課題解決
ベアリングは身の回りにある動くものからあまりなじみのない工場の機械などいたる所で使用されています。機械の動きが悪くなった場合はベアリングが原因の可能性があります。ベアリングコラムではベアリングに関するトラブルに関しても解決できる記事(ベアリングの故障シリーズ)も多数用意しているので、ぜひご覧ください。
7.ベアリングの選び方
図9に示すように、ベアリングには多くの種類があり、また、その大きさも数mm程度の極小のものから、10 mを超える大形のものまでさまざまです。
図9 さまざまな種類のベアリング
さまざま種類のベアリングの中から、機械に適したベアリングをどのようにして選べばよいかと戸惑いを感じたかたもいらっしゃると思います。
ベアリングコラムの「ベアリングの選び方シリーズ」では、使用条件から適合する規格や組込方法などを考慮し幾何に適したベアリングを選ぶポイントをご紹介しています。
機械に興味のあるまたは機械を設計するかたは、ぜひ、「ベアリングの選び方シリーズ」をご覧ください。