機械には回転がつきものですが、製品によっては正確な"遅さ"で、ブレなく回転する精密性が重要となる場合もあります。
今回ご紹介する、印刷機械製造メーカー様が取り扱う商業用印刷機もその一つ。
細心の注意を払いながら印刷機を製造しても、たびたび発生する送りドラムの回転ムラに悩まされてきました。
美しさを追求するグラビア印刷において、回転ムラによる印刷ズレは信用問題に直結するトラブルといえます。
このメーカー様の悩みを知った某大学名誉教授は、送りドラム駆動部の減速機に、速度変動の大きい遊星ギアではなく、トラクションドライブを使うことを提案。
回転に詳しい企業として、ジェイテクトの名前を挙げてくださいました。
トラクションドライブとは、複数のローラを転がり接触で動力伝達する装置です。
従来の歯車型減速機に比べて、なめらかでガタのない減速が可能になります。
ジェイテクトのトラクションドライブユニットは、Koyoブランドで培ったベアリング技術を応用したもの。
ミクロンレベルの高精度加工、ローラ間の摩擦力を左右するトラクショングリース(潤滑油)の最適化などを駆使し、高い伝達力での高精度送りを実現しました。
トラクションドライブユニットは、使用に耐えうるかを試す検査を受けることが多くあります。
精密性を追求する製品に使用される装置だけに、要求されるクオリティが非常に高くなるからです。
しかし、検査で求めたい値や、使用される試験機は、お客様によって多種多様。
ジェイテクトは商品の有用性をご理解いただくために、検査方法から一緒に検討するスタンスをとり続けています。
ご提案の末、メーカー様の製造する印刷機にトラクションドライブユニットを導入いただいたところ、効果はてきめん。
送りドラムの回転ムラが大幅に減少し、印刷品質が格段に向上しました。
お客様からは「なめらかに回って助かった。」「JTEKTのトラクションドライブは精度が高い。」という、うれしいお声をいただきました。
また、トラクションドライブユニットを使用した、従来品よりワンランク上の高性能印刷機の開発にも貢献。
メーカー様と弊社のつながりは、思わぬ広がりを見せております。
ジェイテクトのトランクションドライブユニットは、「構造がシンプルであり、信頼性が高い」という理由から、遊星ローラ式構造を採用。
太陽軸からの入力を遊星ローラの公転出力として取り出す減速方式としています。
ノーバックラッシに特化したタイプや、コンパクト設計に特化したタイプなど、お客様のご要望に応じてカスタマイズも可能です。
先行開発室
先行開発グループ主担当
ジェイテクトのトラクションドライブユニットは、1988年にマシニングセンタのスピンドルに初採用。
1993年に電動自転車の減速機で量産化され、その後、パワーステアリングや医療用X線写真の画像診断装置など、様々な分野へ展開されました。
しかし、まだまだ困っている企業様はたくさんあるはずです。
単に動力を減速したいなら、安価な遊星ギヤや、その他の減速技術で十分。
より緻密な動きを必要とするメーカー様には、ぜひトラクションドライブユニットの良さを知っていただきたいと考えています。
このページが多くの方の目に触れ、お悩み解決のきっかけとなればうれしく思います。