たとえば、インフラ関連施設や病院などで使用される設備機器のモーターは、突然壊れない安定した品質が要求されますが、そのためにはベアリングの電食対策が不可欠です。今回ご紹介するメーカー様が製造するモーターは、電食被害を免れるために、ジェイテクト製のセラミックボールベアリングを採用。その絶縁性と耐久性の高さを兼ね備えた品質に、大変ご満足いただいておりました。
ただ、使用されている材料の特性から、生産コストが高くなるという特徴があります。
「セラミックボールベアリングをもっと気軽に導入したい」という思いは、こちらのメーカー様に限らず、業界全体の願いといえました。
電動(インバーター)モーターはその特性上、動作中に高周波電流による有害な電圧が発生します。ベアリング内部はグリースによる油膜により絶縁されているため、電圧が蓄積され一定量を超えると、転がり接触部分の非常に薄い油膜を通じてスパーク(放電)を起こします。
このときにベアリングにダメージを与えることを電食と呼びます。電食が起こると玉や保持器を痛めてしまい、異音や損壊の原因になります。
ジェイテクトは、セラミックベアリングの先駆けであり、「Koyo」ブランドを掲げる企業として、セラミックベアリングの品質の高さをより多くのメーカー様に感じていただきたいという思いがありました。
その思いに突き動かされ、ジェイテクトは新たなセラミック材を使用した新商品の開発にとりかかりました。
試行錯誤を繰り返したのち、ひとつのセラミック材料に注目しました。
この材料は比較的加工がしやすく、ベアリング用玉として十分な強度を持っています。
いくつもの評価試験の末、モーター用ベアリングとしての実用性が確認されました。ここに、セラミックの絶縁性と耐久性をリーズナブルにご提供できる新商品が完成したのです。
ジェイテクトは新セラミックボールベアリングが完成すると、すぐさまメーカー様に提案し、程なくしてこの商品を採用頂きました。
導入した商品は狙いどおりの性能を発揮、品質を維持しながらモーターのコストを抑えられたとご満足いただきました。
新開発されたセラミック材料を使用。従来のベアリングと同等の絶縁性と耐久性を持ちながら、比較的安価に導入いただけることが特長です。また、線膨張係数(※)が内外輪材料に近く、温度変化によるベアリング内部隙間の変化が少ないため、激しい温度変化のある場所でも劣化しにくいというメリットも兼ね備えております。
新セラミックボールベアリングが誕生したとき、ジェイテクトの歴史に残る素晴らしい商品になると強く思いました。
「誰よりも先に私が導入してみせる!」という思いで、メーカー様にご提案したことを覚えています。実際に採用いただき、本当に感謝しています。
ベアリングは適材適所ではありますが、リーズナブルで使いやすい当商品は、幅広いシーンで活用いただけると確信しております。