都心部で高速道路を建設する際、すでに建造された建物や設備など沿線部にある生活環境、自然環境への影響を抑える必要があります。このため、高架構造ではなく、地下室や基礎工の設置に影響されない大深度地下にトンネルを施工する事業が進められています。
今回、関越道と東名高速間の全長16.2kmを結ぶ「東京外かく環状道路」のトンネル工事のため、大深度地下工事用のカッターシールド掘進機向けに、その回転を支える三列複合円筒ころ軸受が必要になりました。
ジェイテクトは過去に東京湾アクアライン工事に使用された掘進機をはじめ、大小さまざまな掘進機に三列複合円筒ころ軸受の供給を行ってきた信頼と実績があります。
また、分割設計が必要となる大型サイズの三列複合円筒ころ軸受を製造できる唯一の日系メーカーとして技術力が認められ、今回の掘進機向けの分割型三列複合円筒ころ軸受が採用されました。
東京外かく環状道路、そのトンネル工事に使用される掘進機の直径は16.1mとなり、東京湾アクアラインの工事に使われた直径約14mを上回り、国内最大サイズとなりました。
この大型カッターシールドの回転を支えるため、開発されたのが直径7.7mになる本製品(三列複合円筒ころ軸受)となります。
しかし、巨大な三列複合円筒ころ軸受をそのまま運ぶことは、道路幅の狭い日本国内の交通事情では非常に困難であり、分割設計し現地で再度組み立てる必要があります。
さらに、カッター部分を回転させて掘り進む掘進機にとって、回転を支えるための三列複合円筒ころ軸受は性能を左右する重要なパーツであり、高い精度が必要になります。同時に、部品交換が難しい長期にわたる工事を完遂できる耐久性と信頼性も求められます。
ジェイテクトは20年以上前から三列複合円筒ころ軸受の分割輸送に挑戦してきました。
その経験から培ってきた、特殊研磨技術や熱処理時の変形コントロールなど様々な加工技術で、7.7mという巨大な軸受を、『四分割して現地で組み立てる』という工程を挟んでも、回転時のブレをわずか0.1mm程度に抑えることに成功しました。
①軌道輪は外輪、内輪A、内輪B、および掘削トルクを伝達する歯車輪から構成されています。陸送のため、各軌道輪は円周方向に4分割としています。
②ボルト締結および特殊設計により4分割軌道輪をトンネル施工現場で一体のリング形状に組立て可能であり、非分割型軸受と同等の軌道精度や歯車精度を確保しています。
掘進機内の限られた空間に軸受を収め、かつ市場の長寿命要求に応えるため、新形状を採用しました。従来形状と比較し、歯先外径寸法を変えずに軸受寿命を10% 向上させるとともに、軸受断面積を16% 減少させました。
様々な場所で使うことができる分割型三列複合円筒ころ軸受の開発は、今後も鉄道や道路向けトンネル掘削で活用されていくことが期待されます。
ジェイテクトは製品開発を推進し、国内外のインフラ整備に貢献していきたいと考えます。
国内最大級となる外径7.7mの分割型三列複合円筒ころ軸受。
増加する都心向けの大深度トンネル掘削工事などのインフラ整備事業に向け開発された製品です。
分割型の設計を採用し、運搬が容易になること、そのうえで一体型のベアリングに劣らない高精度、高耐久を実現しています。
先行開発室
お客様からの依頼を実現するために、繰り返した試行錯誤から本製品が生まれました
年々大きく、深く、長くなっていくトンネル掘削事業は難易度が上がっています。
それに伴いお客様からの要求掘削距離、つまり軸受寿命への要求が高まっています。長く掘り進んでも安全に使用できること、さらに荷重性能もより高いものが要求されます。また、日本では道路交通法があるため、それを分割して設計・製作しなくてはならないという条件まで付きます。
前例にない大きさで、それらの要求を満たすため、約1年半の年月をかけて、断面形状、加工方法、工程をテストにて確認することにより、さまざまな要素を最適化していきました。
製作の工程では、設計時には想定していなかった変形などが起き、一筋縄ではいきませんでしたが、試行錯誤を繰り返した結果、お客様の要求を十分満足した信頼性の高い、国内最大級の分割型三列複合円筒ころ軸受を完成させることができました。
本製品は国内ではジェイテクトにしかできない技術です。弊社が掲げるJTEKT GROUP VISION「No1&Only Oneの商品・サービス」の一つとして、インフラ構築を通じて豊かな社会に貢献していくものになると考えています。