セラミックスや複数の固体潤滑を組合せた高温用ベアリング
通常のベアリングを高温環境で使用すると、熱により潤滑剤が劣化し、ベアリングが早期に破損します。特に真空中では、アウトガスが発生し、製造工程において製品の品質悪化や歩留まりが悪くなることがあります。このため、高温環境でも安定して動作するベアリングが必要になります。
ジェイテクトでは、耐熱性800℃の窒化けい素で構成された総玉形セラミック軸受を始め、350℃対応の二硫化タングステンによる固体潤滑タイプ、300℃対応の固体潤滑PEEK樹脂保持器タイプなど、さまざまなラインナップで、クリーン・真空・耐食などの複合要素を持つ、高温環境への適応を実現しています。
高温環境性能データ
軸受材料
図3-5 に高温用の軸受材料を示します。SUS440C はおよそ350℃までの高温用材料として使用することができます。350 ~ 500℃程度までは、軌道輪に耐熱性に優れた高速度工具鋼(SKH4、M50)、転動体にセラミックスを用いた高温組合せセラミック軸受を使用します。500℃を超える温度では総セラミック軸受を用います。
潤滑剤
図3-5 に高温用の潤滑剤を示します。200℃程度まではふっ素グリースを用いることができます。200℃を超えると層状結晶構造物質を用います。いずれの層状結晶構造物質も発じん量が多いのでクリーン性が必要な場合には適しません。500℃を超える温度では有効な潤滑剤はありませんので、総セラミック軸受を無潤滑で使用する場合があります。
図3-6 に高温に適応するEXSEV 軸受を示します。図中の温度は目安を示します。境界に近い温度でご使用になる場合はジェイテクトにご相談ください。また、クリーン、真空環境において高温で使用される場合は、それぞれの章を参照してください。
- セラミックスや複数の固体潤滑剤を組合せた高温用ベアリング
- ジェイテクトでは、あらゆる産業の製造現場にある高温工程、熱処理、乾燥工程などで、一般的な高温軸受では対応できなかった環境にも対応するベアリングをご提案致します。
高温環境対応製品
製品名 | 許容回転速度 | 使用温度 (℃) |
真空度 (Pa) |
クリーン度(2) (クラス) |
即納対応 可能サイズ の有無 |
||
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dn値(1) | 最大(min-1) | ||||||
クリーンプロ®-RB | <10,000 | 1,000 | ~260 | 10-5 | 10 | ||
総玉形セラミック軸受 | <4,000 | 500 | ~800 | 10-10 | |||
EXSEV®-WS | <4,000 | 500 | ~350 | 10-5 | ○ | ||
EXSEV®-MG | <10,000 | 1,000 | ~350 | 10-10 | ○ | ||
EXSEV®-PN | <10,000 | 1,000 | ~300 | 10-5 | ○ | ||
EXSEV®-MO | <10,000 | 1,000 | ~300 | 10-5 |
(1)dn値:軸受内径(mm)×回転速度(min-1)
(2)クリーン性は使用条件や周囲の構造などにより異なる場合があります。
高温環境使用事例
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紙カートン製造装置
- 製品名
- EXSEV®-PN
高温ガスバーナ接着工程ではカートン用紙にあらかじめ貼り付けられたポリエチレンフィルムをガスバーナによって加熱溶着します。
この工程内でカートンを搬送するベルトのガイドローラには耐熱性に優れ、グリース流出によってカートンを汚すことがないEXSEV®-PNが採用されています。- グリース飛散防止
- 高温環境における耐久信頼性向上
使用条件 回転速度 3,000min-1 ~ 4,000min-1 温度 220 ℃ 潤滑 二硫化モリブデンほか -
チューブ焼鈍炉
- 製品名
- 組合せセラミック軸受
チューブ焼鈍炉内のガイドロール用軸受は、高温環境・無潤滑で使用されます。
このような用途に組合せセラミック軸受が採用されています。- 高温環境に対応
使用条件 回転速度 300min-1 温度 300℃ -
拡散炉台車
- 製品名
- 総玉形セラミック軸受
拡散炉は高温条件のみでなく、腐食ガスも存在する過酷な条件です。
炉内の搬送台車に転がり機構の採用により、スムーズな搬送が得られ、製品の品質向上、生産性向上につながります。- 高温環境に対応
- 腐食ガスに対する耐食性
- 生産性向上に貢献
使用条件 温度 800 ℃以上 雰囲気 腐食ガス雰囲気 荷重 5 N -
ブリスター包装設備
- 製品名
- 高温組合せセラミック軸受
工程内のヒーターロール用軸受は処理中に高温になるため一般軸受では早期に破損します。
高温用セラミック軸受を使用することで軸受交換周期が延長され、生産性が向上します。