コラム

レオナルド・ダ・ヴィンチは"ベアリングの父"!?~ベアリングの意外な歴史~

人類が二足歩行をするように進化したのは、自由になった両手で効率的にモノを運ぶためだったと考えられています。
「モノを楽に動かしたい」という思いは、人類が誕生以来持ち続ける、根源的な願いのひとつといえるでしょう。

さて、第1回のコラムにご紹介したように、ベアリングは摩擦を減らして、モノを滑らか(=楽)に動かすための道具です。
では、そのベアリングは、いつ生まれ、どのように進化し、普及してきたのでしょうか?

今回は、ベアリングの意外な歴史についてご紹介します。

ミラノ・スカラ広場のレオナルド・ダ・ヴィンチ像

ミラノ・スカラ広場のレオナルド・ダ・ヴィンチ像

1.ベアリングの始まりは、紀元前にあった?

古来、人類が摩擦を減らそうとした例はいくつもありますが、ここではエジプトのピラミッド建造の事例をお話しします。

巨大な"重い石"を積み重ねて作られたピラミッドは、その大きさから多くの人々を驚かせてきました。古代の人々は、一体どのようにして"重い石"を運んだのでしょうか?答えは古代エジプトの壁画から推測することができます。

ピラミッド建造する様子を描いた壁画はいくつかありますが、その中に "重い石"の下に丸太を転がして運んでいる壁画があります。これは丸太を転がすことで摩擦を減らし、少ない力で"重い石"を運んでいたと考えられます。

そして、この運び方は、ベアリングに転動体(ころ)を使う考え方に通じるものです。

図:丸太を転がして摩擦を減らす工夫

丸太を転がして摩擦を減らす工夫

このように人類が摩擦を減らそうとした記録は、年代や方法は異なりますが世界各地で認められます。人類の歴史の中で、"摩擦を減らしてモノを滑らかに動かすこと"が、いかに重要だったのかがわかります。

2.保持器付きベアリングは、レオナルド・ダ・ヴィンチが考案した?

ルネサンス期を代表するイタリアの天才芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチ。彼は「近代ベアリングの父」と言っても過言ではないほど、ベアリングと深いつながりがあります。

何にでも旺盛な好奇心を持っていたレオナルド・ダ・ヴィンチは、機械設計の分野でも、とても大きな功績を残しています。彼の手稿(創作メモ)には、機械に不可欠なベアリングのアイデアスケッチが描かれていました。

彼はその類いまれな創造力で、摩擦を大幅に減らすベアリングの構造を生み出していたのです。

その構造とは、上下2枚の円盤(軌道盤)の間に、転がる玉(転動体)を挟むというものです。驚くことに、そのアイデアスケッチには玉同士が接触しないよう「保持器」が描かれています。

これは、現在使用されているベアリングの構造と、ほとんど同じです。

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レオナルド・ダ・ヴィンチのアイデアスケッチに基づき
ジェイテクト技術者が再現した保持器付きベアリング

こうして、軌道盤・転動体("玉"または"ころ")・保持器という『ベアリングの基本構造』は、今から約500年前に考え出されました。天才レオナルド・ダ・ヴィンチの創造力によって、ベアリングは革新的な進化を遂げたのです。

ただ、ベアリングの基本構造が発明されたとしても、実際に製造し、大量生産することは簡単ではありませんでした。

ベアリングが広く機械に使われるようになるのは、産業革命まで待つことになります。

3.ベアリングの普及は、産業革命から

18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命で、鋼鉄の大量生産が始まりました。これによって強度の高い鋼鉄製ベアリングの量産化ができるようになり、さまざまな分野でベアリングの活用が進みます。

なかでも「ベアリングを用いた車軸」は、産業革命で生まれた偉大な発明のひとつです。

まず、自転車の車軸用として、転動体に"玉"を使用したボールベアリングが発明され、広く普及しはじめました。その後、馬車の車軸用として、転動体に"ころ"を使用したローラーベアリングも発明されました。

「ベアリングを用いた車軸」の登場により、移動・運搬の手段は大幅に発達しました。

また同時期、多くの産業機械にもベアリングが積極的に導入されるようになり、工業化に大いに貢献しました。

ベアリングは、産業革命を通して産業の発展を陰から支えるとともに、人々の暮らしになくてはならないものになったのです。

4.日本のベアリングの歴史

日本製のベアリングは、1916年に海軍の要請を受けて製造されたものが最初といわれています。

ジェイテクトの前身である光洋精工社(後の光洋精工株式会社)がベアリングの製造販売を開始したのは、それから5年後の1921年です。

日本国内での自転車需要の広がり、自動車の登場とともに、日本製ベアリングも順調に進歩・普及していくかに見えました。

ところが、第二次世界大戦の戦災により、日本の工場が大きな損傷を受け、ベアリング業界も深刻な打撃を受けました。

しかし、日本のベアリングメーカーは諦めませんでした。関係者が手を取り合い、共同で高品質なベアリングの加工方法を開発したことで、日本製ベアリングの精度と性能は飛躍的に向上します。

また、モータリゼーションの進展で自動車の耐久性や信頼性を高めるベアリングが次々と開発された結果、日本国内でのベアリングの需要は急激に拡大。高度経済成長を後押ししました。

やがて、日本製ベアリングの精度・性能、そして信頼性は世界的に認められるようになり、海外市場へも進出しました。今や世界中のベアリングの約30%が日本のベアリングメーカーで生産されるようになり、日本は世界的なベアリング大国となったのです。

まとめ ベアリングの進化の歴史は、人類文明の進歩の歴史

ベアリングが発明されなければ、人はいまだに重いモノを大きな力で運んでいたかもしれません。また、私たちの暮らしがこれほど多くの機械に囲まれ、便利・快適になることはなかったでしょう。

ベアリングの誕生と進化は、それほど文明の発展に大きな影響を与えてきたのです。

先人の知恵と技術の結晶であるベアリングは、 "工業化への歴史"における陰の立役者といえるでしょう。

次回のコラム

ベアリングが、どんな原理で摩擦を減らしているかご存じですか?ベアリングの基本構造とは?

第3回コラムも是非ご覧ください。

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第1回 『ベアリングとは?~知っておきたい基本のキホン、役割について~』 第3回 『ベアリングの仕組みって?~摩擦を減らす構造と部品の役割~』 第4回 『ベアリングの違いって?~ベアリングの種類と特長~』 第5回 『ベアリングの用途について(前編)~自動車のこのようなところで使われています~』 第6回 『ベアリングの用途について(後編)~モノづくりに使われるベアリング~』 第7回 『材料と潤滑剤を工夫したベアリング ~身近なところで使われるベアリング~』
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