コラム

ベアリングの違いって?~ベアリングの種類と特長~

ベアリングにはさまざまな種類があります。機械の構造や使われ方に応じて、一番適している種類のベアリングが選ばれています。

今回のコラムではベアリングの種類を大きく分類して、主なベアリングの特長をご紹介します。

ベアリングの違いって?~ベアリングの種類と特長~

1. ベアリングの分類

ベアリングにはさまざまな方向から力がかかり、"力のかかる方向"によって、ベアリングを分類することができます。
そこで、まずベアリングにかかる力についてご紹介します。

図1に、タイヤを取り付ける自動車のホイール用ベアリングにかかる力を示します。
自動車の重さを支える力(図1の青い矢印)として、車軸に対して直角方向の力がかかります。
また、自動車が曲がる場合には遠心力が発生(図1の赤い矢印)して、車軸に対して同じ方向の力がかかります。

図1 自動車のホイール用ベアリングにかかる力

図1 自動車のホイール用ベアリングにかかる力

このようにベアリングには、常にさまざまな方向から力が加わっています。
どの方向の力を、どれだけ支えることができるかによりベアリングは分類されます。

ベアリングにかかるラジアル荷重とアキシアル荷重

ベアリングにかかる力を「荷重」といいます。
軸に対して直角方向にかかる力を「ラジアル荷重」、
軸に対して同じ方向にかかる力を「アキシアル荷重」といいます。

図2 ラジアル荷重とアキシアル荷重

図2 ラジアル荷重とアキシアル荷重

ベアリングの種類の分類

ベアリングが支えることのできる力の方向と転動体の形状により、表1に示すようにベアリングは4種類に分類できます。
詳しくは、ぜひ第3回のコラムもご覧ください。

第3回 『ベアリングの仕組みって?~摩擦を減らす構造と部品の役割~』

表1 ベアリングの種類の分類





転動体
ころ
主な力のかかる方向 軸と直角
ラジアル荷重
ラジアルボールベアリング ラジアルローラーベアリング
軸と同じ
アキシアル荷重
スラストボールベアリング スラストローラーベアリング

表1に示すベアリングの種類のうち、使われることが多い『ラジアルボールベアリング』および『ラジアルローラーベアリング』の代表的な形式を紹介します。

2.ラジアルボールベアリング

ラジアルボールベアリングは、「軸に対して直角方向の力」を支(ささ)える"玉"軸受です。

深溝玉軸受(ボールベアリング)

深溝玉軸受(ボールベアリング)

深溝玉軸受は、ベアリングのなかでも最も多く使われている形式です。
深溝玉軸受はラジアル荷重に加えて、同時に両方向のある程度のアキシアル荷重をも支えることができます。
大きなアキシアル荷重を支える場合には、次に紹介するアンギュラ玉軸受が使われます。

商品情報 - 深溝玉軸受(ボールベアリング)

アンギュラ玉軸受(アンギュラボールベアリング)

アンギュラ玉軸受(アンギュラボールベアリング)

アンギュラ玉軸受は、ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重を同時に支えることができます。
両方向のアキシアル荷重を支える場合には、二つ以上のアンギュラ玉軸受を組み合わせて使います。

図3 両方向のアキシアル荷重を支えるアンギュラ玉軸受の組み合わせ

図3 両方向のアキシアル荷重を支えるアンギュラ玉軸受の組み合わせ

ここでアンギュラ玉軸受の接触角について補足します。

「ラジアル荷重」と「アキシアル荷重」がかかる場合の「接触角」

図4 「ラジアル荷重」と「アキシアル荷重」を支えるアンギュラ玉軸受の構造

図4 「ラジアル荷重」と「アキシアル荷重」を支えるアンギュラ玉軸受の構造

ベアリングに「ラジアル荷重」と「アキシアル荷重」がかかるとき、軌道輪(軌道盤)と転動体との間にかかる荷重方向と、軸に対して直角方向との角度を接触角といいます。

商品情報 - アンギュラ玉軸受(アンギュラボールベアリング)

3.ラジアルローラーベアリング

ラジアルローラーベアリングは、「軸に対して直角方向の力」を支える "ころ"軸受です。ラジアルローラーベアリングは、ラジアルボールベアリングよりも大きな荷重を支えることができ、ころの種類に応じたベアリング形式があります。

円筒ころ軸受(シリンドリカルローラーベアリング)

円筒ころ軸受(シリンドリカルローラーベアリング)

「円筒ころ」が、転動体に使われています。円筒ころ軸受は深溝玉軸受よりも大きなラジアル荷重を支えることができます。また衝撃がおこる機械でも使われます。

商品情報 - 円筒ころ軸受(シリンドリカルローラーベアリング)

針状ころ軸受(ニードルローラーベアリング)

針状ころ軸受(ニードルローラーベアリング)

「針状(しんじょう)ころ」が、転動体に使われています。針状ころ軸受は、円筒ころよりも小さな径の針状ころが使われているため、図5に示すようにベアリングの断面高さが小さくなり、機械を小型にして軽量にすることができます。

図5 円筒ころ軸受と針状ころ軸受の断面高さの違い

図5 円筒ころ軸受と針状ころ軸受の断面高さの違い

商品情報 - 針状ころ軸受(ニードルローラーベアリング)

円すいころ軸受(テーパーローラーベアリング)

円すいころ軸受(テーパーローラーベアリング)

円すい台形の「円すいころ」が、転動体に使われています。
円すいころ軸受は、ローラーベアリングのなかでも最も多く使われ、ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重を同時に支えることができます。
両方向のアキシアル荷重を支える場合には、二つ以上の円すいころ軸受を組み合わせて使います。

図6 両方向のアキシアル荷重を支える円すいころ軸受の組み合わせ

図6 両方向のアキシアル荷重を支える円すいころ軸受の組み合わせ

商品情報 - 円すいころ軸受(テーパーローラーベアリング)

自動調心ころ軸受(スフェリカルローラーベアリング)

自動調心ころ軸受(スフェリカルローラーベアリング)

たる形の「凸面ころ」が転動体に使われ、図7に示すように「球面を持った外輪軌道面」と、「内輪軌道面」との間に組み込まれています。このため、自動調心ころ軸受では、内輪、転動体、保持器が、外輪に対して傾いた状態で回転することができます。

図7 自動調心ころ軸受の構造

図7 自動調心ころ軸受の構造

自動調心ころ軸受は、図8に示すように大きな荷重がかかって軸がたわみやすい機械などで使われます。

図8 軸のたわみ

図8 軸のたわみ

商品情報 - 自動調心ころ軸受(スフェリカルローラーベアリング)

まとめ

支える力の方向と大きさに応じた『ベアリングの形式』があり、機械の構造または使われ方によって適切な『ベアリングの形式』が選ばれています。
今回、ご紹介した以外にも、さまざまな『ベアリングの形式』があります。
さらに詳しく知りたい方は、Koyoベアリングの品種別ページまたはカタログをご利用いただくか、直接ジェイテクトまでお問い合わせください。

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次回のコラム

さまざまなベアリングの形式をご紹介しましたが、どのような機械に、どのような形式のベアリングが使われているのでしょうか?

ベアリングの用途について(前編)

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