コラム

ベアリングの仕組みって?~摩擦を減らす構造と部品の役割~

モノの回転をなめらかにするベアリング。
では実際にそのベアリングが、どのようにしてなめらかに回転するのかをご存じでしょうか?

第3回では、ベアリングの構造と構成する部品の役割についてご紹介します。

第3回 ベアリングコラム

1.ベアリングの原理

回転をなめらかにするために「摩擦を減らす必要がある」ということは、コラムの第1回でもご紹介しました。

ベアリングとは?~ベアリングの基本、役割について~

ベアリングはどのようにして摩擦を減らしているのでしょうか?

ベアリングは、転がり運動で摩擦を減らす

コラムの第2回で、ベアリングの歴史は"重い石の下"に"丸太を転がして"運ぶことから始まったと紹介しました。
図1に示すように、「軸」が回転すると、ベアリング内に配置された複数個の「転動体("玉"または"ころ")」が転がります。
ベアリングは、この「転がり運動」によって摩擦を減らしています。

図1 ベアリングと滑り軸受の構造

図1 ベアリングと滑り軸受の構造

「転がり運動」のベアリングは、「滑り(すべり)運動」の滑り軸受に比べて、より摩擦を小さくし、回転するエネルギーの消費量を少なくすることができます。

それでは、ベアリングの構造はどのようになっているのでしょうか?さらに詳しくご紹介します。

2.ベアリングの構造

現代のベアリングにはさまざまな種類がありますが、その基本構造は今から約500年前にレオナルド・ダ・ヴィンチが考案したとされるベアリングの構造とほぼ同じです。

レオナルド・ダ・ヴィンチは"ベアリングの父"!?~ベアリングの意外な歴史~

ベアリングを構成する部品には、

● 軌道輪(軌道盤)...リング状の部品

● 転動体...軌道輪(軌道盤)の間を転がる部品(転動体には "玉"と"ころ"があります) 

● 保持器...転動体どうしが接触しないように一定の間隔に保つ部品

があります。

軌道輪

図2に示すベアリングは、「ラジアルベアリング」といい、軸に対して直角方向にかかる力を支えます。
ボールベアリングの転動体には"玉"が、ローラーベアリングの転動体には"ころ"が組み込まれています。

図2 ラジアルベアリングの構造

図2 ラジアルベアリングの構造

軌道輪は、このラジアルベアリングに使用されます。


軸に組み込まれる内側の軌道輪を内輪といいます。
また、外側の軌道輪を外輪といい、ハウジング(※1:図3に示す)に組み込まれます。

※1 ハウジング

ハウジングとは、ベアリングが組み込まれる際に、ベアリングの外輪と接触する部品をいいます。

図3 ハウジング

図3 ハウジング

参照:軸及びハウジングの設計について詳しくはこちら

軌道盤

図4に示すベアリングは「スラストベアリング」といい、軸と同じ方向の力を支えます。
軌道盤は、このスラストベアリングに使用されます。


軸に組み込まれる側の軌道盤を軸軌道盤といいます。
また、ハウジングに組み込まれる軌道盤をハウジング軌道盤といいます。

図4 スラストベアリングの構造

図4 スラストベアリングの構造

ベアリングがなめらかに回転するために、軌道輪(軌道盤)の転動体が転がる表面は非常になめらかに加工されています。

転動体

表1に示すように、転動体には "玉"と"ころ"があります。

表1 転動体の種類



玉 ボールベアリング
円筒ころ 円筒ころ ローラーベアリング
針状ころ 針状ころ
円すいころ(円すい台形) 円すいころ(円すい台形)
凸面ころ(たる形) 凸面ころ(たる形)

支(ささ)える力の大きさ、回転する速度など、ベアリングが使われる条件に応じた適切な種類の転動体があります。

ベアリングの形式については、次回の第4回ベアリングコラムにて紹介しますが、ご興味のある方は次のページもご覧ください。

参照:軸受形式の選定 - ベアリングの基礎知識

保持器

図5に示すように、ベアリングの内輪が回転すると転動体が転がります。このとき、ベアリングに保持器がなければ、隣り合う転動体どうしが接触します。
接触する表面では、転動体の転がる方向が互いに逆となり、転動体の転がり運動をさまたげてしまいます。

図5 保持器がない場合の転動体の転がり運動

図5 保持器がない場合の転動体の転がり運動

これを防ぐために、保持器は隣り合う転動体を分けて配置し、転動体がなめらかに転がるようにしています。

支える力の大きさ、回転する速度などの、ベアリングが使われる条件に応じた適切な種類の保持器があります。

図6に代表的な保持器を紹介します。

図6 代表的な保持器

図6 代表的な保持器

このように軌道輪(軌道盤)・転動体・保持器は、それぞれの役割を持っています。それらの役割が組み合わさって、ベアリングはなめらかに回転することができます。


しかし、これらの構成部品だけでは、ベアリングが『安定して』なめらかに回転し続けることはできません。
さらに、ベアリングにとって、もうひとつの重要な部品を紹介します。

3.安定した回転に必要な潤滑剤

お皿の表面に油がついていて、すべって手からお皿を落としてしまった経験がありませんか?このように接触する表面間に油があると、摩擦が小さくなることを、みなさんも経験的にご存じでしょう。

ベアリングが『安定して』なめらかに回転するためには、転がり運動の摩擦を減らし、また部品の摩耗を防ぐ必要があります。この役割をはたすのが"潤滑剤"です。

ベアリングの "潤滑剤"には、半固体状(クリームのような状態)の"グリース"と、液体状の"潤滑油"が多く使われます。
また、"潤滑剤"は、回転するベアリングの内部に発生する熱を取り去り、ベアリングの寿命を延ばす役割もはたしています。
このため"潤滑剤"は、ベアリングが『安定して』なめらかに回転するためには、「重要な部品」なのです。

参照:潤滑の目的と方法について詳しくはこちら

まとめ ベアリングを『安定して』なめらかに回転させる部品と潤滑剤

ベアリングの部品である軌道輪(軌道盤)・転動体・保持器は、それぞれが役割を持ち、それらの役割が組み合わさって、ベアリングはなめらかに回転します。

さらに、"潤滑剤"は転がり運動の摩擦を減らし、部品の摩耗を防いでいます。

このように、各部品がそれぞれの重要な役割をはたすことで、ベアリングは『安定して』なめらかに回転し続けることができるのです。

次回のコラム

ベアリングにはどんな種類があって、それぞれにどのような特徴があるのかをご存じでしょうか?

ベアリングの種類と特長

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第1回 『ベアリングとは?~ベアリングの基本、役割について~』 第2回 『レオナルド・ダ・ヴィンチは"ベアリングの父"!?~ベアリングの意外な歴史~』 第3回 『ベアリングの仕組みって?~摩擦を減らす構造と部品の役割~』 第4回 『ベアリングの違いって?~ベアリングの種類と特長~』 第5回 『ベアリングの用途について(前編)~自動車のこのようなところで使われています~』 第6回 『ベアリングの用途について(後編)~モノづくりに使われるベアリング~』 第7回 『材料と潤滑剤を工夫したベアリング ~身近なところで使われるベアリング~』

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