コラム

ベアリングの用途について(後編)~モノづくりに使われるベアリング~

さて、皆さんは自動車以外ではどのような機械に、どのような形式のベアリングが使われているのかご存じでしょうか。

第1回のコラムでもご紹介したように、ベアリングは回転する軸を支(ささ)える部品です。
このため軸がある機械では、必ずといっていいほどベアリングが使用されています。

今回のコラムは前回に続き、ベアリングの用途についてお届けします。
なかでも、「エネルギーを作る」、「モノの材料を作る」、そして「モノを加工する」の3分野の機械で使われているベアリングをご紹介します。

ベアリングの用途について(後編)~モノづくりに使われるベアリング~

1.エネルギーを作るベアリング - 風力発電機

私たちの生活に必要なエネルギーを生み出す発電機。近年は地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)を排出しない自然エネルギーの利用に関心が高まっています。なかでも風力発電機は、世界中で普及してきています。

高所に設置される風力発電機は保守点検が難しく、ベアリングには高い信頼性(故障がきわめて少ない)と、長い寿命が求められます。

風力発電機には多くのベアリングが使われていますが、ここでは、風から力を受けて発電機に回転を伝える「主軸用ベアリング」について説明します。


図1 高所に設置される風力発電機図1 高所に設置される風力発電機

図2風力発電機の構造図2風力発電機の構造

主軸用ベアリング

風力発電機は風の力を受けて主軸が回転し、その回転を発電機に伝えて発電をします。
主軸用ベアリングは、羽根と回転部分の重さに加え、大きさと方向が不規則に変化する風の力も支えます。
そのため、大きな力を支えることができ、調心性に優れた自動調心ころ軸受が主に使われています。

■調心性とは?

内輪、転動体、保持器が、外輪に対して傾いた状態で滑らかに回転することをいいます。

自動調心ころ軸受の調心性は、第3回ベアリングコラム 『ベアリングの違いって?~ベアリングの種類と特長~』 でもご紹介していますので、ぜひご覧ください。


自動調心ころ軸受 - ベアリングの違いって?~ベアリングの種類と特長~

また、大きな力を支えるため、主軸用ベアリングには、1mを超える大形自動調心ころ軸受が使われています。

図3 風力発電主軸用大形自動調心ころ軸受図3 風力発電主軸用大形自動調心ころ軸受

「風力発電装置用製品」の詳細はこちら

2.モノの材料を作るベアリング - 鉄鋼圧延機

モノの材料を作る機械の代表として、用途に応じた鉄鋼材料の形状を作る圧延機をご紹介します。

図4 代表的な鉄鋼材料の形状図4 代表的な鉄鋼材料の形状

圧延機では、回転する2つのロールの間に鉄鋼材料を通し、力をかけて延ばします。また、「鉄は熱いうちに打て」のことわざのとおり、鉄鋼材料を高温状態で圧延することも多くあります。この場合、ベアリングは高温条件下で大きな力を支えてロールを回転させます。

図5 鉄鋼圧延機の構造図5 鉄鋼圧延機の構造

ワークロール用ベアリング

ワークロールには、圧延するときに発生する非常に大きなラジアル荷重および両方向のアキシアル荷重を支えるために、四列円すいころ軸受が使われています。

図6 ワークロール用四列円すいころ軸受図6 ワークロール用四列円すいころ軸受

バックアップロール用ベアリング

ワークロールは、圧延時に大きな荷重を受けて変形しやすくなりますが、バックアップロールはその変形を抑制します。バックアップロールには、非常に大きなラジアル荷重を支える四列円筒ころ軸受と、アキシアル荷重を支える複列円すいころ軸受が使われています。

図7 バックアップロール用ベアリング図7 バックアップロール用ベアリング

ジェイテクトは、1943年に鉄鋼圧延機用ベアリングを日本で初めて生産し、以降長年にわたって圧延機を含む多くの鉄鋼製造設備で使われるベアリングを提供しています。

「圧延機用ベアリング」の詳細はこちら

「鉄鋼設備用」の詳細はこちら

3.モノを加工するベアリング - マシニングセンタ(工作機械)

最後に、モノを加工する機械をご紹介します。

用途に応じた形状に製品や部品を加工する機械を、工作機械といいます。
なかでも、コンピューターで制御をしてモノを加工するマシニングセンタが、近年急速に普及しています。
マシニングセンタでは、人の手ではできないような精密・微細な加工が可能となり、また加工時間が大幅に短縮されます。

図8 モノを加工する工作機械図8 モノを加工する工作機械

マシニングセンタのスピンドル(工具を取り付ける主軸)には、加工中の発熱によって工作物の寸法変化や、加工の精密性の低下を招かないために、温度上昇が少ないベアリングが必要です。

図9 マシニングセンタの構造とスピンドル図9 マシニングセンタの構造とスピンドル

スピンドル用ベアリング

スピンドルには、加工時のラジアル荷重とアキシアル荷重を同時に支える、アンギュラ玉軸受が使われています。

図10 スピンドル用アンギュラ玉軸受図10 スピンドル用アンギュラ玉軸受

ジェイテクトは、世界で初めてベアリング材料にセラミックスを採用しました。

このセラミックベアリングは高速回転時の温度上昇が少なく、加工物の寸法変化を抑(おさ)えます。


また、発熱の要因となる潤滑油を必要な部分に適正な量のみ供給し、速やかに排出するよう工夫がされています。


「スピンドル用ベアリング」の詳細はこちら

工作機械用のベアリングは動画でもご紹介しておりますので、以下のページもご覧ください。

工作機械用軸受・ご紹介ムービー - JIMTOF2018

また、ジェイテクトでは工作機械を製作しています。
ジェイテクトの工作機械について詳しく知りたい方は、こちらのサイトもご確認ください。

工作機械・メカトロニクス|株式会社 ジェイテクト

まとめ 私たちの生活を支えるベアリング

エネルギーを作る機械、材料を作る機械、加工する機械は、私たちの普段の生活ではあまり目にしません。
しかし、今回ご紹介したようなモノづくりの機械では、多くのベアリングが使われています。
これらのベアリングは、力を支えて回転するだけではなく、私たちの生活を支えてくれているのです。

さらに、ベアリングに求められる性能はどんどん高くなってきており、用途に適したベアリングの提供が求められています。

次回のコラム

近年の技術進歩にともない、ベアリングに要求される環境や条件は、非常に高度そして多様になっています。
高清浄真空・高温・腐食などの特殊な環境で用いられる機械にはベアリングには、どのような種類があり、今まで紹介してきたベアリングと比べてどのように違うのでしょうか?

材料と潤滑剤を工夫したベアリング

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