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ベアリングの選び方(その2)~「ベアリングの配列の決め方」~

ベアリングの選び方(その1)では、「ベアリングの形式の選び方」をご紹介しました。

ベアリングの選び方(その1)~「ベアリング選びの順番」と「形式」~

今回は、選んだベアリング形式が妥当であることを確認するポイントとして、「配列」についてご紹介していきます。

ベアリングの選び方(その2) ~「ベアリングの配列の決めかた」~

ところで皆様は「配列」とはなにかご存知でしょうか?「配列」とは、軸に対してどんなベアリングを何個、配置するかを意味する言葉です。
一般的な機械では、通常1本の軸に2個以上のベアリングが組み込まれて力を支えます。
このベアリングコラムでは、代表として1本の軸に2個のベアリングが組み込まれる事例を、ご紹介します。

表1 選んだベアリング形式の確認項目

順番 検討項目 主な確認内容
ベアリングの形式 かかる荷重の方向と大きさから選び、取付けスペース(空間)に収まる
ベアリングの配列 1本の軸に2個(以上)のベアリングを使う
<今回のコラムでご紹介します>
ベアリングの寸法・寿命 寸法・寿命が要求を満足するか
ベアリングの許容回転速度・回転精度、はめあい、内部すきま 機械に必要な回転精度・剛性を満足するか
寿命を満足するはめあいと内部すきまであるか
ベアリングの予圧と剛性 機械に必要な剛性を満足するか
ベアリングの潤滑 ベアリングが長期間安定して回転できるか
ベアリングの周辺部品 周辺部品の構造
ベアリングの取付けと取外し 機械の保守・点検が簡単にできるか

1.配列の決め方のポイント

配列を決めるには二つのポイントが重要です。

  • 熱による膨張を考慮すること
  • かかる荷重条件を考慮して固定側と自由側に分けること

このポイントについてご説明していきます。

2.熱による膨張を考慮して配列を検討する

機械を運転してベアリングが回転すると、ベアリング内部に熱が発生し、その熱が周辺部品に伝わり、軸とハウジングとが熱膨張します(図1参照)。
多くの場合、軸とハウジングとの間には温度差があるため、熱膨張の差による軸の伸縮を逃がす(吸収する)ことが必要です。この軸の伸縮を適切に逃がさないと、ベアリングに過大な力がかかって損傷します。そのため、軸の伸縮を考えてベアリングを配列します。

図1 熱膨張による軸の伸縮

図1 熱膨張による軸の伸縮

3.固定側と自由側とに分けるベアリングの配列(軸の伸縮を逃がす)

ベアリングは、機械の回転と固定部分との間に組み込まれて力を支えます。
1本の軸に組み込まれる2個のベアリングのうち、1個を固定側ベアリングとして、軸方向に軸とハウジングとを固定します。これを位置決めといいます。もう1個のベアリングを自由側ベアリングとして、軸が軸方向に自由に動くようにして熱膨張の差による軸の伸縮を逃がします。

図2見取り図と断面図の関係

図2 見取り図と断面図の関係

本コラムでは見取り図で表現される内容を、上記のような断面図で表現します。

図3 ベアリングの配列の代表例

図3 ベアリングの配列の代表例

ベアリングの配列の組合せについて

1) 固定側ベアリング

固定側ベアリングには、軸とハウジングとを軸方向に固定するため、ラジアル荷重とアキシアル荷重とがかかります。そのため、ラジアル荷重とアキシアル荷重を支えるベアリングの形式を、荷重の大きさに応じて選びます。

表2 固定側に使う代表的なベアリングの形式

荷重の大きさ ベアリングの形式
小さい 深溝玉軸受、(組合せまたは複列)アンギュラ玉軸受
大きい つば付き円筒ころ軸受、(組合せまたは複列)円すいころ軸受、
自動調心ころ軸受

また、別々の固定側ベアリングで、ラジアル荷重とアキシアル荷重を支えることもあります。
図4に示すように、深溝玉軸受の外径とハウジングの内径との間にすきまをつけて、深溝玉軸受はアキシアル荷重を支え、円筒ころ軸受にはラジアル荷重のみを支える配列もあります。

図4 別々の固定側ベアリングでラジアル荷重とアキシアル荷重を支える配列

図4 別々の固定側ベアリングでラジアル荷重とアキシアル荷重を支える配列

2個のベアリングのうちどちらを固定側ベアリングにするかは、機械の構造またはベアリングの寿命のつりあいを考えて決めます。

図5に示すように、固定側ベアリングには大きなラジアル荷重とアキシアル荷重を支える大きな深溝玉軸受、自由側ベアリングには小さなラジアル荷重のみを支える小さな深溝玉軸受の配列もあります。

図5 寿命がつりあうベアリングの配列

図5 寿命がつりあうベアリングの配列

なお、ベアリングの寿命の確認については、第3回のベアリングコラムにてご紹介します。

2) 自由側ベアリング

軸の伸縮を自由側ベアリングで逃がします。分離形ベアリング(内輪と外輪との分離が可能)の場合では、ころと軌道面との間で軸の伸縮を逃がします。

図6 分離形ベアリング (自由側)

図6 分離形ベアリング (自由側)

非分離形(内輪と外輪との分離ができない)ベアリングでは、ベアリングの外径とハウジングの内径との間にすきまをつけて、ベアリングとともに軸の伸縮を逃がします。

図7 非分離形ベアリング (自由側)

図7 非分離形ベアリング (自由側)

表3 自由側ベアリングに使う代表的なベアリングの形式

ベアリングの形式
分離形 円筒ころ軸受(NU,N形)、針状ころ軸受(NA形)
非分離形 深溝玉軸受、(組合せまたは複列)アンギュラ玉軸受、複列円すいころ軸受、自動調心ころ軸受

3)ベアリングの内輪と外輪とに相対傾きの確認

荷重による軸のたわみ、または固定側と自由側のベアリングとの間に取付け誤差により、ベアリングの内輪と外輪とに大きな相対傾きが生じることがあります。大きな相対傾きがあると、ベアリングに異常荷重がかかり損傷の原因となります。

図8 ベアリングの内輪と外輪の相対傾き

図8 ベアリングの内輪と外輪の相対傾き

許容できる軸受の相対傾き角度に応じた、ベアリング形式であるかを確認します(表4を参照)。

表4 許容できる軸受の相対傾き角度

内輪と外輪との相対傾き角度の大きさ(転がり軸受の総合カタログに掲載)
小さい⇔大きい
円筒ころ軸受<円すいころ軸受<深溝玉軸受またはアンギュラ玉軸受<自動調心ころ軸受

4.固定側と自由側とを区別しないベアリングの配列

固定側と自由側を区別しないベアリングの配列もあります。

1)軸の伸縮の影響が少ない小型機械

短い軸で小さな荷重を支える小型機械では軸の伸縮の影響が少ないため、2個のベアリングを固定側と自由側に区別しないで配列することもあります(図9を参照)。

図9 小型機械でのベアリングの配列

図9 小型機械でのベアリングの配列

2)軸に剛性をもたせる場合

予圧を与えて軸に剛性をもたせる場合(予圧については、ベアリングの選び方(その3)以降に詳しくご紹介します)には、固定側と自由側とにベアリングを区別しません。この場合には、アンギュラ玉軸受または円すいころ軸受の2個対向して背面または正面取付けとします。(図10を参照)

図10 取付け方法(組合せベアリング)

図10 取付け方法(組合せベアリング)

表5に正面取付けと背面取付けとの比較をします。
正面取付けと背面取付けを選ぶ際には、モーメントを考慮する必要があります。
モーメントは、「かかる力の大きさ」と「力のかかる点までの距離」の掛け算にて求められ、その大きさに応じて正面または背面取付けを選びます。

図11 モーメント(正面取付け)

図11 モーメント(正面取付け)

表5 正面取付けと背面取付けとの比較

正面取付け 背面取付け
作用点位置寸法(図12を参照) 短い 長い
モーメントの作用に対して 弱い(剛性が低い)
→モーメントが小さい場合
強い(剛性が高い)
→モーメントが大きい場合
ベアリングの取付け 外輪を押さえる 内輪を押さえる

表5に示すように、モーメントが小さい場合は正面取付けを、モーメントが大きい場合には背面取付けを選びます。

図12 作用点位置寸法( αF < αB )

図12 作用点位置寸法( αF < αB )

まとめ

選んだベアリング形式が妥当であるかを、「ベアリングの配列の決め方」についてご紹介しました。

  1. 熱膨張による軸の伸縮を逃がす自由側ベアリングを選びます。
  2. 内輪と外輪の傾き角度に応じて、適切なベアリングの形式を選びます。
  3. 予圧を与えて軸に剛性を持たせる場合は、固定側・自由側ベアリングに区別せず、アンギュラ玉軸受または円すいころ軸受を2個対向して使用します。

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