回転機械における軸受は機械の種類により使用条件が異なり、軸受に対する要求性能も違うが、一般に、一本の軸に 2個以上使用されるのが通常である。
また、軸受の使い方としては、軸方向の位置決めのために 1個の軸受を固定側とし、他の軸受を自由側軸受として使用する場合が多い。
ベアリングの基本について、さらに詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
≫ベアリングって?初心者向けベアリングの基本~役割、構造、仕組み~
表 4-1 固定側軸受と自由側軸受
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内容 | 
適用軸受形式 | 
図例 | 
| 固定側軸受 | 
- 軸受を軸方向に位置決めし、固定するために用いる。
 
- この軸受にはラジアル荷重と同時にアキシアル荷重も負荷できる軸受を選定する。
 
- 両方向のアキシアル荷重を受けるため、取付けに際しては、アキシアル荷重の大きさに応じて強度的な考慮も必要である。
 
 
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深溝玉軸受  組合せアンギュラ玉軸受  複列アンギュラ玉軸受  自動調心玉軸受  つば付き円筒ころ軸受  ( NUP, NH形)  複列円すいころ軸受  自動調心ころ軸受 | 
例1  ~  例11 | 
| 自由側軸受 | 
- 運転時の温度変化による軸の膨張・収縮を逃がすため、また軸方向の取付け位置の調整のために用いる。
 
- ラジアル荷重のみを負荷し、内輪と外輪とを分離できる軸受が適している。
 
- 非分離形軸受を使用する場合は、通常外輪とハウジングとの はめあい を すきまばめ として軸の伸縮を軸受とともに逃がすようにする。
 また、軸と内輪とのはめあい面で逃がす場合もある。 
 
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- 分離形
  円筒ころ軸受( NU, N形)  針状ころ軸受( NA形など) 
- 非分離形
  深溝玉軸受  組合せアンギュラ玉軸受  (背面組合せ)  複列アンギュラ玉軸受  自動調心玉軸受  複列円すいころ軸受  (TDO形)  自動調心ころ軸受 
 
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| 固定側、自由側を区別しない場合 | 
- 軸受間隔が短く、軸の伸縮の影響が少ない場合には、アキシアル荷重を負荷できるアンギュラ玉軸受や円すいころ軸受などを 2個対向させて用いる。
 
- 取付け後のアキシアルすきまはナットやシムなどで調整する。
 
 
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深溝玉軸受  アンギュラ玉軸受  自動調心玉軸受  円筒ころ軸受(NJ, NF形)  円すいころ軸受  自動調心ころ軸受 | 
例12  ~  例16 | 
| たて軸に使用する場合 | 
- 固定側軸受にはラジアル荷重とアキシアル荷重との両方を負荷できる軸受を用いればよい。アキシアル荷重が大きい場合はスラスト軸受とラジアル軸受を併用する。
 
- 自由側軸受には前述と同様にラジアル荷重だけを負荷できる軸受を選定し、軸の伸縮を逃がせるようにして用いる。
 
 
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- 固定側
  組合せアンギュラ玉軸受  (背面組合せ)  複列円すいころ軸受  (TDO形)  スラスト軸受とラジアル軸受の併用 
 
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例17  例18 | 
表 4-2 軸受配列の例
| 図例 | 
軸受配列 | 
摘要 | 
適用例 | 
| 固定側 | 
自由側 | 
| 例1 | 
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- 高速回転にも適し、一般に広く使用されている。
 
- 軸受相互間の心のずれや軸の たわみ などが予想されるときは不適当である。
 
 
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中形電動機  送風機など | 
| 例2 | 
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- 高速回転にも適し、例 1よりも大きな荷重や衝撃荷重が作用する場合に適する。
 
- 分離形のため、内輪・外輪ともに しめしろ を必要とする場合に適する。
 
- 軸受相互間の心のずれや軸の たわみ が予想されるときは不適当である。
 
 
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車両用  主電動機 | 
| 例3 | 
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- 例2よりも更に大きな荷重や衝撃荷重が作用する場合に適する。
 
- この例は、固定側に高い剛性を必要とする配列で、背面組合せとし、予圧を与えて使用する。
 
- 軸、ハウジングとも精度を良くし、取付け誤差を小さくする必要がある。
 
 
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製鉄用  テーブル  ローラ  旋盤主軸 | 
| 例4 | 
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- 例3よりもアキシアル荷重が小さい場合や高速回転の場合に適する。
 
- 内輪・外輪とも しめしろ を必要とする場合に適する。
 
- 固定側には組合せアンギュラ玉軸受の代りに複列アンギュラ玉軸受を使用することもある。
 
 
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電動機 | 
| 例5 | 
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- あまり大きなアキシアル荷重がかからない場合に適する。
 
- 内輪・外輪とも しめしろ を必要とするときにも適用できる。
 
 
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製紙用  カレンダ  ロール  ディーゼル  機関車車軸 | 
| 例6 | 
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- 高速回転でラジアル荷重が大きく、アキシアル荷重もかかるような用途に適している。
 
- 深溝玉軸受には、ラジアル荷重がかからないように、外径とハウジング内径との間にすきまをつける。
 
 
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ディーゼル  機関車変速機 | 
| 例7 | 
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- 最も一般的に使用される配列である。
 
- ラジアル荷重のほかに、ある程度のアキシアル荷重も負荷できる。
 
 
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ポンプ  自動車変速機 | 
| 例8 | 
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- 比較的大きいアキシアル荷重が、両方向に作用する場合に適する。
 
- 固定側には複列アンギュラ玉軸受の代りに、組合せアンギュラ玉軸受を使うこともある。
 
 
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ウォームギヤ  減速機 | 
| 例9 | 
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 | 
- 取付け誤差や軸にたわみがある場合に最も適した配列である。
 
- 大きいラジアル荷重のほかにある程度のアキシアル荷重も負荷できる。
 
 
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製鉄用テーブル  ローラ減速機  天井クレーン  走行車輪 | 
| 例10 | 
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- 取付け誤差や軸にたわみがある場合に最も適した配列である。
 
- アダプタを用いて軸受の取付け・取外しを容易にした配列で、段加工やねじ加工をしない長い軸を使用する場合に適する。
 
- アキシアル荷重を負荷する必要のある場合は、不適当である。
 
 
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一般産業機械  カウンタ軸 | 
| 例11 | 
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- 取付け誤差や軸に たわみ がある場合に最も適した配列である。
 
- 例10よりも大きな荷重や衝撃荷重が作用する場合に適する。
 
- ラジアル荷重のほかに、ある程度のアキシアル荷重を負荷できる。
 
 
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製鉄用テーブルローラ | 
 
| 図例 | 
固定側・自由側を区別しない場合 | 
摘要 | 
適用例 | 
| 例12 | 
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- 小さな機械で、荷重が小さい場合に最も多く利用される配列である。
 
- 軽い予圧を与えて使用する場合には、一方の外輪の側面に、ばね又は厚さを調整したシムを入れる。
 
 
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小形電動機  小形減速機  小形ポンプ | 
| 例13 | 
 
背面取付け 
 
 
正面取付け 
 
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- 予圧を与え、軸に剛性を持たせる場合に適する。比較的アキシアル荷重が大きく、かつ高速回転を要する箇所に多く用いられている。
 
- 背面取付けはモーメントが作用する場合に適する。
 
- 予圧をかけて使用する場合には、予圧の調整に注意を要する。
 
 
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工作機械主軸 | 
| 例14 | 
 
背面取付け 
 
 
正面取付け 
 
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- 例13よりも、更に大きいアキシアル荷重や衝撃荷重が作用する場合に適する。
 
- 予圧をかけ、軸に剛性を持たせる場合に適する。
 
- 背面取付けはモーメントが作用する場合に適する。
 
- 正面取付けは内輪にしめしろが必要な場合には、取付けが容易となる。また、一般に取付け誤差がある場合に有利である。
 
- 予圧をかけて使用する場合には、予圧の調整に注意を要する。
 
 
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減速機  自動車車軸 | 
| 例15 | 
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- 軽荷重、高速かつ高精度回転を必要とする場合に適する。
 
- 予圧をかけて軸に剛性を持たせる場合に適する。
 
- 図の背面組合せのほか、正面組合せや並列組合せを用いる場合もある。
 
 
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工作機械主軸 | 
| 例16 | 
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- 重荷重・衝撃荷重に耐えられる。
 
- 内輪・外輪ともしめしろが必要な場合にも使用できる。
 
- 運転中にアキシアル内部すきまが過小にならないよう注意する。
 
 
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建設機械  終減速装置 | 
 
| 図例 | 
たて軸の場合 | 
摘要 | 
適用例 | 
| 例17 | 
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- 固定側に組合せアンギュラ玉軸受、自由側に円筒ころ軸受を用いた例で高速回転に適する。
 
 
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たて形電動機  たて形ポンプ | 
| 例18 | 
 | 
- 低速・重荷重で、アキシアル荷重がラジアル荷重より大きい場合に適する。
 
- 自動調心性があるので、軸心のずれや軸にたわみが予想される場合に適する。
 
 
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クレーンのセンタ軸  たて形ポンプ |