コラム

ベアリングの選びかた(その3) ~「ベアリングの寸法と寿命」~

ベアリングの選びかた(その2)では、「ベアリングの配列の決めかた」をご紹介しました。

ベアリングの選びかた(その1)~「ベアリング選びの順番」と「形式」~

ベアリングの選びかた(その2)~「ベアリングの配列の決めかた」~

今回は、選んだベアリング形式が妥当であるかを確認するために、「ベアリングの寸法と寿命」をご紹介します。

ベアリングの選びかた(その3) ~「ベアリングの寸法と寿命」~

ベアリングを選ぶ場合、機械の中でベアリングが安定して回転するよう、ベアリングの寸法を決めることが必要です。その際にどのような点に注意が必要でしょうか?

ベアリングの寸法を決める際に確認する次の二つの内容について、ご紹介します。

  • ベアリングが必要な寿命をもつこと
  • ベアリングが滑らかに回転すること

表1 選んだベアリング形式の確認項目

順番検討項目主な確認内容
ベアリングの形式 かかる荷重の方向と大きさから選び、取付けスペース(空間)に収まる
ベアリングの配列 1本の軸に2個(以上)のベアリングを使う
ベアリングの寸法・寿命 寸法・寿命が要求を満足するか
<今回のコラムでご紹介します>
ベアリングの回転精度・剛性 機械に必要な回転精度・剛性を満足するか
ベアリングの周辺部品 周辺部品の構造、組込み
ベアリングの潤滑方法 ベアリングが長期間安定して回転できるか
ベアリングの取付けと取外し 機械の保守・点検が簡単にできるか

1. ベアリングの寿命について

1) 必要なベアリングの寿命

ベアリングの寿命を必要以上に長く設定することは経済的ではなく、機械の用途および使用条件に応じた適切な寿命を決めることが重要です。
各種の機械ごとに経験的に採用されているベアリングの必要寿命時間を、表2に示します。

表2 ベアリングの必要寿命時間 (抜粋)

使用条件使用機械必要寿命時間(h)
短時間、又は断続的に運転 家庭用電気器具・電動工具、農業機械、重量物巻上げ装置 4,000h ~ 8,000h
常時使用しないが確実な運転 家庭冷暖房器用電動機、建設機械、コンベヤ、エレベータ 8,000h ~ 12,000h

参考:ベアリングの必要寿命時間

2)ベアリングの寿命とは?

それではベアリングの寿命は、どのようにして決まるのでしょうか?
荷重を支えるベアリングが回転すると、内輪・外輪の軌道面には転動体(玉またはころ)が通過するたびに繰り返し荷重がかかります(図1参照)。

図1 ベアリングにかかる繰り返し荷重

図1 ベアリングにかかる繰り返し荷重

この繰り返し荷重によって、転動体の転動面と接触する内輪・外輪の軌道面には高い圧力が発生します。その結果、ベアリングの材料が疲れ、軌道面または転動面の表面がうろこ(鱗)状にはがれます(図2参照)。

図2 転がり疲れの発生

図2 転がり疲れの発生

図3 転がり疲れによる材料のはがれ(円すいころ軸受の内輪軌道面)

図3 転がり疲れによる材料のはがれ
(円すいころ軸受の内輪軌道面)

この転がり疲れが生じるまでの総回転数を、ベアリングの「転がり(疲れ)寿命」とよび、予測することができます。
なお、ベアリングの転がり寿命にはばらつきがあるため、一群の同じベアリングを同じ条件で使用したとき、そのうちの90%のベアリングが疲れずに回転できる総回転数を、「基本定格寿命」とよびます。 

3)ベアリングの寿命の確認

機械の設計時には、必要な時間内に転がり疲れが生じない「基本定格寿命」をもつベアリングを選びます。
「基本定格寿命」を予測するためには、次の二つの荷重を使います。

基本動定格荷重

「ベアリングの転がり疲れに対する強さ(能力)」を、「基本動定格荷重」とよびます。
これはベアリングが100万回転したときに、「転がり疲れ」が現れる荷重のことです。

「転がり軸受総合カタログ」の寸法表には、ベアリングの形式・寸法ごとに「基本動定格荷重」が示されています(表3参照)。

表3 ベアリングの基本動定格荷重

基本定格荷重の名称軸受の種類
基本動ラジアル定格荷重 Cr ラジアル軸受
基本動アキシアル定格荷重 Ca スラスト軸受

動等価荷重

機械に組み込まれたベアリングには様々な大きさと方向の荷重がかかります。しかし、これらの荷重は「基本動定格荷重」と直接比べることができません。このため、ベアリングの寿命の検討には、実際にかかる荷重・回転速度のときと同じ寿命になる荷重を求めます。
この荷重を「動等価荷重」とよびます。

参考:ベアリングにかかる荷重"の求め方

参考:動等価荷重"の求め方

「基本動定格荷重」と「動等価荷重」を使って、ベアリングの「基本定格寿命」を求めます(図4参照)。

図4 ベアリングの寿命

図4 ベアリングの寿命

選んだベアリングの寿命が、必要な寿命を満足しているか(不足または大幅に超えていないか)を確認します。満足していない場合には、ベアリングの寸法を見直します。

2.ベアリングの滑らかな回転の確認

回転していない、または低速回転のベアリングに大きな荷重がかかると、転動体と内輪・外輪の軌道面との接触部に凹み(永久変形)が生じます。この凹みは荷重の増加とともに大きくなり、ある限度を超えるとベアリングの滑らかな回転を妨げます(図5および6参照)。

図5 凹みの発生

図5 凹みの発生

図6 大きな荷重による凹み(玉軸受の内輪軌道面

図6 大きな荷重による凹み(玉軸受の内輪軌道面)

1) 基本静定格荷重

凹みが大きくなって滑らかな回転を妨げないよう、ベアリングにかかる荷重には限度が定められています。
この限度荷重を「基本静定格荷重」とよびます(図7参照)。

図7 滑らかな回転を妨げない凹み

図7 滑らかな回転を妨げない凹み

ベアリングのカタログの寸法表には、ベアリングの形式・寸法ごとに「基本静定格荷重」が示されています(表4参照)。

表4 ベアリングの基本静定格荷重

基本定格荷重の名称軸受の種類
基本静ラジアル定格荷重 C0r ラジアル軸受
基本静アキシアル定格荷重 C0a スラスト軸受

2)静等価荷重

機械に組み込まれたベアリングには、様々な大きさと方向の荷重がかかります。しかし、これらの荷重は「基本静定格荷重」と直接比べることができません。このため、実際に最大の荷重がかかる転動体と内輪・外輪との接触面との間に生じる接触と同じ接触になる荷重を求めます。
この荷重を「静等価荷重」とよびます。

参考:静等価荷重"の求め方

「基本静定格荷重」と「静等価荷重」とを比べ、凹みによるベアリングの使用限度を確認します。

参考:ベアリングの使用限度

図8 ベアリングの滑らかな回転の確認

図8 ベアリングの滑らかな回転の確認

選んだベアリングが使用限度を満足していない場合には、ベアリングの寸法を見直します。

なお、ジェイテクトは、ベアリングの寿命を計算するサービスをご提供しておりますので、ご利用ください。

参考:技術計算プログラム

基本動定格荷重と基本静定格荷重のカタログでの記載例

図9 ラジアル軸受

図9 ラジアル軸受

参考:転がり軸受総合カタログ 深溝玉軸受の寸法表

図10 スラスト軸受

図10 スラスト軸受

参考:転がり軸受総合カタログ スラスト玉軸受の寸法表

3.ベアリングの主要寸法と呼び番号

上記のベアリングの寿命検討した結果、機械の要求に応えない場合は、ベアリングの寸法を変更します。
その際、ベアリングの主要寸法と呼び番号を使って、適切な寸法のベアリングを見つけることができます。

1) 主要寸法

ベアリングの基本寸法は、内径、外径、幅または高さ、面取寸法などの輪郭を示す寸法です(図11および12参照)。ベアリングのカタログには、内径に対する主要寸法が体系的に示されています。

参考:主要寸法

図11 ラジアルベアリングの主要寸法

図11 ラジアルベアリングの主要寸法

図12 スラストベアリングの主要寸法

図12 スラストベアリングの主要寸法

2) 呼び番号

「呼び番号」とは、ベアリングの特徴を表す呼び名(番号)です。
この「呼び番号」は、ベアリングの形式・主要寸法・回転精度・内部すきまなどが体系的に名付けられており、活用すると、容易にベアリングを選ぶことができます。

また、多くのベアリングの主要寸法は国際規格(ISO)で規定され、日本の規格(JIS)もこの国際規格に準拠しています。このため、ベアリングは国際商品といえます。

呼び番号の代表例

呼び番号の代表例

詳しくは、

参考:軸受系列記号

参考:呼び番号の構成

4.まとめ

今回は選んだベアリング形式が妥当であるかを確認するポイントとして、「ベアリングの寸法と寿命」についてご紹介しました。

  1. 使用機械および使用条件に応じたベアリングの寿命を設定します。
  2. 設定した寿命に応じた"基本動定格荷重"をもつベアリングを選びます。
  3. 滑らかに回転する"基本静定格荷重"をもつベアリングを選びます。
  4. これらの要求に応える適切な主要寸法をもつベアリングを選びます。

この場合、ベアリングの呼び番号を活用すると、容易にベアリングを選ぶことができます。

次回コラム

選んだベアリングが妥当であることを確認するポイントとして、次にベアリングの回転精度・剛性を確認します。

次回の『ベアリングの選びかた(その4)』は11月公開予定です。

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