コラム

ベアリングの用途について(前編)~自動車のこのようなところで使われています~

ベアリングにはさまざまな形式があり、それぞれの特長が異なります。実際にはどのような機械に、どのような形式のベアリングが使われているかご存じでしょうか?

今回のコラムではベアリングの用途についての前編として、「自動車」で使われるベアリングについてご紹介します。

ベアリングの用途について(前編)~自動車のこのようなところで使われています~

1. 自動車用ベアリングはどのように使われている?

地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)の排出量を減らす、故障件数を少なくするなど、自動車の性能を高めるためには、ベアリングの性能がますます重要になってきています。

現在主流であるエンジンを使った自動車には約100個~150個ものベアリングが巧みに機能していることは、第1回のベアリングコラムでご紹介しました。
第1回 『ベアリングとは?~知っておきたい基本のキホン、役割について~』

今回のコラムでは、自動車のエンジンからの力を車軸に伝えるための装置であるトランスミッションとデファレンシャルギアにおいて、ベアリングがどのように使われているかをご説明します。

図1エンジンからの力を車軸に伝える装置図1エンジンからの力を車軸に伝える装置

2. トランスミッション(変速機)に使われるベアリング

速く運転するとき、または坂道で大きな駆動力が必要なときなど、自動車には走行状況に応じた駆動力が必要です。

トランスミッションは、エンジンからの力を走行に適した駆動力に変えて車軸に伝える装置です。内部には、多くの形式のベアリングがその特長を活(い)かして組み込まれており、自動車用部品のなかでも数多くのベアリングが使われています。

トランスミッションを大きく分けると、マニュアルトランスミッションとオートマティックトランスミッションの2種類に分けられます。マニュアルトランスミッションが使われている自動車には、操作レバーが運転席に設置されています。

図2 マニュアルトランスミッション用の操作レバー図2 マニュアルトランスミッション用の操作レバー

運転者は、レバーを手動(マニュアル)で操作して、エンジンからの力を走行状況に適した駆動力に変えます。
マニュアルトランスミッションは、軸と歯車で構成されおり、ここではそれらを支(ささ)えるベアリングをご紹介します。

図3マニュアルトランスミッションの構造図3マニュアルトランスミッションの構造

図4 マニュアルトランスミッションの仕組み図4 マニュアルトランスミッションの仕組み

軸を支えるベアリング

エンジンからの力の大きさに応じたベアリングの形式が使われ、軸の回転と歯車からかかる力の両方を支えます。

表1 軸を支えるベアリング

ラジアル荷重アキシアル荷重ベアリングの形式
小さい 小さい 深溝玉軸受
(ボールベアリング)
大きい 小さい 円筒ころ軸受
(シリンドリカルローラーベアリング)
大きい 大きい 円すいころ軸受
(テーパーローラーベアリング)

ラジアル荷重・アキシアル荷重については、第4回でご紹介していますので、そちらもご覧ください。

第4回「ベアリングの違いって?~ベアリングの種類と特長~」

図5 軸を支える深溝玉軸受(ボールベアリング)図5 軸を支える深溝玉軸受(ボールベアリング)

 歯車を支えるベアリング

マニュアルトランスミッションでは、歯車は常にかみ合って回転しています。
走行に適した駆動力を車軸に伝える場合は、操作レバーにてその駆動力に適した歯車(A)を選びます。選ばれた歯車(A)は軸と接続され、軸と同じ回転数で回転します。

走行状況が変わって異なる駆動力を車軸に伝える場合には、操作レバーにて接続されている歯車(A)を軸から離し、異なる駆動力に適した歯車(B)を選びます。選ばれた歯車(B)は軸と接続され、軸と同じ回転数で回転します。

このとき、軸と離された歯車(A)と軸との回転数は異なります。

歯車と軸とが異なる回転数で回転するように、針状ころ軸受(針状ころと保持器の組み合わせ)が、歯車と軸との間に組み込まれ、歯車の内径面(内側の面)と軸の外径面(外側の面)との間を転がります。

図6 変速に使う歯車と軸の回転数図6 変速に使う歯車と軸の回転数

図7 歯車を支えるベアリング(針状ころと保持器の組み合わせ)図7 歯車を支えるベアリング(針状ころと保持器の組み合わせ)

3. デファレンシャルギアに使われるベアリング

自動車が左右に曲がるときには、内側の車軸の回転数を少なく、外側の車軸の回転数を多くします。

デファレンシャルギアは、トランスミッションからの駆動力をさらに大きな駆動力に変え、左右の車軸に異なる回転数にして伝える装置です。

図8 自動車旋回時の車輪の回転図8 自動車旋回時の車輪の回転

デファレンシャルギアは、ピニオン軸(トランスミッション側の軸)と車軸側の軸に取り付けられた歯車が、直角にかみ合っています。ベアリングは、軸の回転と歯車からかかる力の両方を支えます。

図9 デファレンシャルギアの仕組み図9 デファレンシャルギアの仕組み

図10 デファレンシャルギアの構造図10 デファレンシャルギアの構造

軸を支える円すいころ軸受(テーパーローラーベアリング)


組み合わされた円すいころ軸受が、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重とを同時に支え、歯車のかみ合いを正しく保って大きな駆動力を左右の車軸に伝えます。

ジェイテクトは、回転時の駆動力損失が非常に少ない世界トップクラスの低トルク円すいころ軸受を提供しています。合わせてベアリングの小型化をも実現しており、自動車のCO2排出量を減らすことに大きく貢献しています。

図11 低トルク円すいころ軸受図11 低トルク円すいころ軸受

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※"LFT" はLow Friction Torque の略称でJTEKT の登録商標です。 

まとめ

今回エンジンからの力を車軸に伝える装置に使われるベアリングをご紹介しましたが、自動車にはそれ以外の箇所にも非常に多くのベアリングが使われています。一つ一つのベアリングの特長を活かすことによって、自動車は走行性能と安全性を高めています。
よりいっそう安全で快適なに向けて、ベアリングには高い性能と信頼性の両方が求められ続けています。

なお、今回のコラムで紹介した以外の自動車で使われているベアリングに関心をお持ちのかたは、下記をご覧ください。

商品情報 - 分野別:自動車

会社案内 - Passion for Automobiles

次回のコラム

自動車以外にも、「エネルギー」を生み出し、「材料」を作り、「加工」する多くの機械があります。それらの機械にもベアリングが使われていることをご存じでしょうか?
次回:コラムの第6回の『ベアリングの用途について(後編) ~モノづくりに使われるベアリング~』は4月公開予定です。

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