コラム

ベアリングの選び方(その6)~「ベアリングの潤滑」~

ベアリングの選び方(その5)では、「ベアリングの予圧と剛性」をご紹介しました。

今までのベアリングの選び方はこちらをご覧ください

今回は、選んだベアリング形式が妥当であることを確認するポイントとして、「ベアリングの潤滑」についてご紹介します。

ベアリングの選び方(その6)~「ベアリングの潤滑」~

ベアリングの転動体と軌道輪(内輪および外輪)の表面は、非常になめらかに加工されています。しかし、非常になめからであっても表面には凹凸があります。

ベアリングが回転すると転動体と軌道輪との凸部が接触します。この凸部の接触によって表面に摩擦・摩耗が発生し、ベアリングのなめらかな回転を妨げます。(図1参照)

図1 転動体と軌道輪との接触(潤滑剤なし)図1 転動体と軌道輪との接触(潤滑剤なし)

この摩擦・摩耗を防ぐために、接触部の間に油などを与えることを潤滑といいます。適切な潤滑のもとでは、油膜によって転動体と軌道輪とが直接接触しなくなります。その結果、摩擦が小さくなり、摩耗が大幅に減少します。(図2参照)

図2 転動体と軌道輪との接触なし(潤滑剤あり)図2 転動体と軌道輪との接触なし(潤滑剤あり)

ベアリングが「安定して」なめらかに回転するためには、転がり運動の摩擦を減らし、部品の摩耗を防ぐ必要があり、潤滑は大きな役割をはたします。

ベアリングの仕組みって?~摩擦を減らす構造と部品の役割~安定した回転に必要な潤滑剤

表1 選んだベアリング形式の確認項目

順番 検討項目 主な確認内容
ベアリングの形式 かかる荷重の方向と大きさから選び、取付けスペース(空間)に収まる
ベアリングの配列 1本の軸に2個(以上)のベアリングを使う
ベアリングの寸法・寿命 寸法・寿命が要求を満足するか
ベアリングの許容回転速度・回転精度、はめあい、内部すきま 機械に必要な回転精度・剛性を満足するか
寿命を満足するはめあいと内部すきまであるか
ベアリングの予圧と剛性 機械に必要な剛性を満足するか
ベアリングの潤滑方法 ベアリングが長期間安定して回転できるか
<今回のコラムでご紹介します>
ベアリングの周辺部品 周辺部品の構造
ベアリングの取付けと取外し 機械の保守・点検が簡単にできるか

ベアリングが長期間安定して回転するための潤滑方法について、次の内容をご紹介します。

  • 潤滑の目的
  • 潤滑の種類
  • グリース潤滑の特長
  • 油潤滑の特長

1. 潤滑の目的

潤滑の目的は主に「摩擦」と「摩耗」を減らすことですが、それ以外の目的もあります(表2参照)。

表2 潤滑の目的

No. 目的
1 ベアリング各部品の摩擦および摩耗を減らす
2 ベアリング内部の摩擦によって生じる熱をもち去り、温度を下げる
3 転がり接触面に常に適正な油膜を形成し、ベアリングの疲れ寿命を延長する
4 ベアリングが使用中にさびることを防ぐ
5 ベアリング内部へ侵入する異物を排除する

この潤滑によって、ベアリングには様々な恩恵(プラスの効果)がもたらされます。

2. 潤滑の種類

ベアリングの主な潤滑には、半固体状(クリームのような状態)のグリースを使うグリース潤滑と、潤滑油を使う油潤滑があります。

グリースは半固体状のため流れ出しにくく、ベアリング内部に封じ込めることが簡単です。そのため密封装置が簡易となり、多くのベアリングにはグリース潤滑が使われます。

一方、油潤滑はグリース潤滑よりも潤滑性能が優れており、高速回転領域、大きな冷却効果、ごみのろ過などが必要な場合に使われます(表3参照)。

表3 グリース潤滑と油潤滑との比較

No. 項目 グリース潤滑 油潤滑
1 密封装置 簡易 やや複雑
装置の保守に注意が必要
2 潤滑性能 良い 非常に良い
3 回転速度 低・中速領域 高速領域にも使用できる
4 潤滑剤の交換 やや複雑 簡易
5 潤滑剤の寿命 比較的短い 長い
6 冷却効果 なし 良い
(ただし循環が必要)
7 ごみのろ過
(異物の排除)
困難 容易

また、グリース潤滑および油潤滑以外にも、特殊環境で使うベアリングでは固体潤滑剤が使われています。これについては下記のコラムをご覧ください。

材料と潤滑剤を工夫したベアリング~身近なところで使われるベアリング~

「グリース潤滑」と「油潤滑」のそれぞれについて、「潤滑剤」「潤滑剤の選び方」「潤滑の方法」をご紹介します。

3. グリース潤滑

1) グリースとは

グリースの主な成分は、基油(潤滑油)、増ちょう剤および添加剤であり、使う目的に応じてこれらの成分と量とを調整・配合されています(表4参照)。

表4 グリースの成分と役割

成分 役割
グリース 基油
(潤滑油)
潤滑性能に優れた油
増ちょう剤 基油の中に分散して、油分を保持して半固体状にする
(使用温度範囲、機械的安定性などの特性を定める)
添加剤 使う目的に応じた性能を補う
(例:重荷重に耐える、さびの発生防止)

基油に使う潤滑油については、このコラムの後半の『4. 油潤滑』で紹介します。
増ちょう剤は、基油(潤滑油)の中に分散して半固体状にし、基油が流れ出すことを防ぎます。
添加剤は、使う目的に必要な性能を補います。
グリース潤滑では、ベアリングの回転時にグリースから基油が徐々に滲(にじ)み出て、ベアリングを潤滑します。

2) グリースの選び方

使う目的に必要な特性をもつ適切なグリースを選びます(表5参照)。

表5グリースの特性の例

表5グリースの特性の例

<注意>

銘柄の異なるグリースを混合してはいけません。グリースの性質が変化してベアリングの損傷を引き起こすことがあります。

3) グリース潤滑の方法

グリース潤滑の主な方法として、密封形(あらかじめベアリング内にグリースを封入)と充填給脂とをご紹介します。

a) 密封形ベアリング

密封形ベアリングは、ベアリングメーカーが使う目的に必要なグリースをベアリングの内部に入れた後、シールドまたはシールで密封しています(図3参照)。密封形ベアリングはそのままの状態で機械に組み込まれます。

図3 密封形ベアリング(シール付き)図3 密封形ベアリング(シール付き)

b) 充填給脂法

グリースのないベアリングを機械に組み込み、その後にベアリングにグリースを供給します(図2参照)。グリースニップルから補給されたグリースはハウジング内部のグリースセクタに充満され、ベアリング内部に流れ込みます。 使われたグリースはベアリング内部から押し出され、グリースバルブの回転盤の遠心力によりハウジング外部に排出されます。

図4 充填給脂法の例図4 充填給脂法の例

グリースの補給間隔は、軸受の形式・大きさと回転速度から求めます。

図5 グリースの補給間隔図5 グリースの補給間隔

転がり軸受総合カタログ - グリースの補給間隔

4. 油潤滑

1) 潤滑油とは

潤滑油には、一般に原油を精製した潤滑に適した成分である鉱油が使われます。
しかし、鉱油は高温では酸化して潤滑性能が低下し、また低温では粘度が大きくなって潤滑油をかき回すための必要な力( 撹拌(かくはん)抵抗 )が大きくなるとの短所があります。
そのため、高温または低温で潤滑性能に優れる合成油も使われます(表6参照)。
潤滑油に添加剤を加え、特定の性能(酸化、さび、泡などの発生防止)を向上します。

表6 各種潤滑油の特性

潤滑油の種類 高度精製鉱油 合成油
シリコーン油 ポリフェニールエーテル油
使用温度範囲(℃) -40 ~ +220 -70 ~ +350 0 ~ +330
潤滑性
酸化安定性
耐放射能 不可 不可 - 可

2) 潤滑油の選び方

ベアリングの運転温度において適切な粘度をもつ潤滑油を選びます。 まず、軸受形式ごとに適正な動粘度を選びます(表7参照)。

表7 ベアリング形式による適正動粘度

軸受形式 運転温度での適正な動粘度(mm2/s)
玉軸受
円筒ころ軸受
13以上
円すいころ軸受
自動調心ころ軸受
20以上
スラスト自動調心ころ軸受 32以上

次に、使用条件に応じて適正な動粘度を選びます(表8参照)。

表8 使用条件に応じた適正動粘度

表8 使用条件に応じた適正動粘度

動粘度が低い潤滑油は「サラサラ」の状態で潤滑油の抵抗が少なく、高速で回転するベアリングに使います。ただし、動粘度が低すぎると、潤滑油膜の形成が十分でなく、潤滑効果が低くなります。

一方、動粘度が高い潤滑油は「ドロドロ」の状態で潤滑油膜が強く、大きな力のかかるベアリングに使います。ただし、動粘度が高すぎると、潤滑油の粘性抵抗により大きな発熱が発生します。

潤滑油の動粘度は、温度により変化します(図6参照)。そのため、運転時の温度を考慮して適正な潤滑油を選びます。

図6 潤滑油の粘度と温度との関係図6 潤滑油の粘度と温度との関係

3) 油潤滑の方法

多くの油潤滑の方法のなかから、運転状態、使用条件およびコストを考慮して、最適の潤滑方法を選びます。
次に代表的な4種類の油潤滑の方法をご紹介します。

a) 油浴潤滑

ベアリングを潤滑油に浸して機械を運転する方法で、低・中速回転に適しています。

図7 油浴潤滑図7 油浴潤滑

b) 滴下給油

給油器から潤滑油を滴下し、回転部分の作用でハウジング内に潤滑油を霧にして充満する方法で、冷却効果があります。比較的高速・中荷重まで適用できます。

図8 滴下給油図8 滴下給油

c) 飛沫給油

歯車などを軸に取付けて、潤滑油をはねかけ、飛沫にして給油する方法です。比較的高速まで適用できます。

図9 飛沫給油図9 飛沫給油

d) 強制循環給油

ベアリング内部に給油した後に冷却し、再び循環させる給油方法です。 高速回転または高温条件の場合に多く適用します。

図10 強制循環給油図10 強制循環給油

その他の油潤滑の方法(ジェット給油、オイルミスト潤滑など)もありますので、こちらをご覧ください。

転がり軸受総合カタログ - 油潤滑の方法

まとめ

ベアリングが「安定して」なめらかに回転するためには、転がり運動の摩擦を減らして部品の摩耗を防ぐ必要があり、潤滑は大きな役割をはたします。ベアリングが長期間安定して回転するためには、適切な潤滑剤および潤滑方法を選ぶことが重要です。

  1. ベアリングの主な潤滑には、半固体状(クリームのような状態)のグリースを使うグリース潤滑と、潤滑油を使う油潤滑があります。
  2. 多くのベアリングには、密封装置が簡易となるグリース潤滑を使います。
  3. 高速回転領域や、大きな冷却効果、ごみのろ過などが必要な場合には、油潤滑を使います。
  4. 潤滑剤(グリース・潤滑油)と潤滑方法は、運転状態、使用条件およびコストを考慮して、最適のものを選びます。

次回コラム

選んだベアリングが妥当であることを確認するポイントとして、次にベアリングの周辺部品をご紹介します。
次回の『ベアリングの選びかた(その7)』は5月公開予定です。

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