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鉄鋼・産業設備用ドライブシャフト~概要、点検と損傷事例~

回転する機械には、多くの形式のベアリングとオイルシールが使われます。
本コラムの最後に、これらの損傷事例をご紹介しておりますので、合わせてご覧ください。
鉄鋼および産業設備用に、ジェイテクトは動力を機械に伝えるドライブシャフトを製造・販売しています。

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ジェイテクトのカタログ『鉄鋼・産業設備用ドライブシャフト』に鉄鋼・産業設備用ドライブシャフトを掲載していますが、カタログには専門用語が多く使われ、敬遠される方も多いように思われます。
そこで本コラムでは、鉄鋼用を例にとって、ドライブシャフトの概要、点検および損傷事例をご紹介します。
<カタログ「鉄鋼・産業設備用ドライブシャフト」>

1. ドライブシャフトとは

ドライブシャフトとは、原動機の動力を機械に伝える回転軸です。

一般に限られた機械のスペースの中に、ドライブシャフトは設置されます。

この限られたスペース内において、駆動軸(入力軸)と従動軸(出力軸)をフレキシブル(自由自在)に連結して原動機からの動力を滑らかに伝えるために、ドライブシャフトには図1に示すユニバーサルジョイント(十字軸タイプ自在継手ともいいます。)が用いられています。

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a) 駆動軸と従動軸との連結 b) 構造

図1 ユニバーサルジョイント

さらに、1つのユニバーサルジョイントには4個の転がり軸受からなるクロスベアリングを使用しており(図2参照)、低摩擦でトルク損失を最小限に抑えることができます。


202303280022132.png図2 クロスベアリングの構造

2. ドライブシャフトの構成部品

代表例として、図3に鉄鋼圧延機に用いられるドライブシャフトを、表1にそれを構成する部品について説明します。


2023032800311.png図3 鉄鋼圧延機用ドライブシャフト

表1 ドライブシャフトの構成部品

番号 部品名称 説明
クロスベアリング 十字形の軸とそれぞれを支持する4個の転がり軸受で構成されています。
ベアリング固定ボルト クロスベアリングとその相手部品との締結に用います。
スプラインスリーブ/シャフト スプライン穴・軸を有して取付け長さの調整が可能です。
スプラインカバー スプラインの防じん(塵)と防水性を高めます。
フランジヨーク おもに駆動装置との連結に用います。
用途に応じてさまざまな形式の継手方式があります。
フィッティングヨーク おもに機械・原動機との連結に用います。
用途に応じてさまざまな形式の継手方式があります。

ドライブシャフトの形式は、クロスベアリングの形状によって分類され、表2に形式と特長を示します。

表2 ドライブシャフトの形式と特長

形式 特長 代表的な
構造
ブロックタイプ 超重荷重用で、水・塵埃(じんあい)がかかる
過酷な雰囲気でも使用可能です。
4


202303280041.jpg図4 ブロックタイプ

3. ドライブシャフトの選び方

機械の目的に適合するよう①強度、②寿命、③作動角(図1参照)および④寸法に応じて、ドライブシャフトを選びます。

ドライブシャフトの選び方について、詳しくはこちらをご覧ください。

<カタログ「鉄鋼・産業設備用ドライブシャフト」ドライブシャフトの選定>

4. ドライブシャフトのメンテナンスと点検方法

ドライブシャフトを長く安心してご使用いただくためには、定期点検が必須です。

1)定期点検

定期点検には、グリース給脂とクロスベアリング固定ボルトの締付トルクがあります。

A)グリース給脂

図5に示す①クロスベアリングと②スプライン部に、給脂間隔(表3参照)と給脂量を守って同じ銘柄のグリースを給脂してください。なお、給脂量とグリースの銘柄については、JTEKTにご照会ください。

<注意>

給脂間隔、給脂量を守らず、また、異なるグリースを給脂すると、ドライブシャフトの早期損傷につながります。


202303280051.png図5 グリースの給脂位置

表3 定期給脂の周期

設備 定期給脂の周期
熱間圧延機 1か月ごと
冷間圧延機 1か月ごと
その他の設備 3か月ごと

B)締付トルクの点検

4に示す周期でベアリング固定ボルト(クロスベアリングを固定するボルトとフランジ固定用ボルト)の点検を行います。

表4 ベアリング固定ボルトの点検

設備 点検の周期
初期点検 1週間後、1か月後
定期点検 6か月ごと

ベアリング固定ボルトの点検では、次を確認します。

・ベアリング固定ボルトの緩(ゆる)み または回り止め(図6参照)の破損

2023032800612.jpg 2023032800623.jpg
a) 1本ボルト回り止め b) 3本ボルト回り止め

図6 ベアリング固定ボルトの回り止め

・ハンマリングもしくは目視でのベアリング固定ボルトの伸び(図7)


2023032800711.png図7 ベアリング固定ボルトの伸びの確認

ベアリング固定ボルトの緩め・締付方法は、次の手順で行ってください。

・チェーントングなどの治具でドライブシャフトを固定します(図8参照)。

・ねじ部と頭部座面にグリースを少量と塗布してから、ベアリング固定ボルトを締め付けます。

・レンチ、張力計などを用いて、規定のトルクにてベアリング固定ボルトを締め付けます(図8参照)。

<注意>

規定の締付トルクで締め付けていない場合、ベアリング固定ボルトの早期損傷につながります。


2023032800812.jpg図8 ドライブシャフトの固定方法

2)分解点検

設備の長時間停止や重大事故を防止するために、鉄鋼圧延機用ドライブシャフトでは稼働後1年ごとを目安に主要部品(図9及び図10参照)の分解点検を行います。

分解点検時の確認内容を表5に示します。


2023032800911.png図9 分解点検を行う主要部品

2023032801011.jpg 図10 クロスベアリング部の主要部品(クロスベアリング、ベアリング固定ボルト、ヨーク)

表5 主要部品の分解点検

部品 点検箇所 損傷の確認
クロスベアリングの
クロス
20230328001151.png 圧痕、摩耗、剥離、焼付き、
クラック、打ちきず、さび など
クロスベアリングの
ベアリングカップ
20230328001152.png
ベアリング固定
ボルト
20230328001153.png ボルトの曲がり、伸び、
クラック、さび など
ヨーク 20230328001154.png クラック、打ちきず、さび など
(特にクロスベアリング取付部と
フランジ取付部)
フィッティングヨーク
(小判穴ヨーク)
20230328001155.png 摩耗、かじり、クラック など

スプラインスリーブ/シャフト

20230328001156.png

ドライブシャフトのメンテナンスと点検方法について、詳しくはこちらをご覧ください。

<カタログ「鉄鋼・産業設備用ドライブシャフト」、ドライブシャフトのメンテナンス、点検方法>

3)ドライブシャフトの損傷事例

主要部品ごとのドライブシャフトの損傷事例、要因、対策または処置を、表6~表10と図12~図20に示します。

損傷が認められる場合には、適切な対策が必要です。

表6 クロスベアリングの損傷事例

部品 損傷事例 要因 対策
クロスベアリングの
クロス
軌道面根元部の剥離

図11

・潤滑不良 ・定期的なグリース給脂
軌道面先端部の剥離 図12 ・長時間使用による材料疲れ ・異径ころの採用
13参照
軌道面の圧痕 14 ・過大な負荷の作用 ・使用条件の見直し
・適切な荷重の負荷
クロスベアリングの
ベアリングカップ
軌道面の剥離 15 ・潤滑不良 ・定期的なグリース給脂


20230328001111.jpg図11 クロス軌道面根元部の剥離


20230328001211.jpg図12 クロス軌道面先端部の剥離

20230328001312.png

図13 異径ころの採用による均等荷重


20230328001411.jpg図14 クロス軌道面の圧痕


20230328001511.jpg図15 ベアリングカップ軌道面の剥離

表7 ベアリング固定ボルトの損傷事例

部品 損傷事例 要因 対策
ベアリング固定
ボルト
ボルトの折損
(平面的破面形状)
16 ・ボルトに軸力の作用なし ・規定の締付トルクで
締め付ける
・ベアリングカップ、
ヨークの取付面の
メンテナンス
ボルトの折損 17 ・過大な曲げ応力の負荷 ・使用条件の見直し
・適切な荷重負荷
・曲げ応力の低減


20230328001611.jpg図16 ベアリング固定ボルトの折損(平面的破面形状)

20230328001711.jpg図17 ベアリング固定ボルトの折損

表8 ヨークの損傷事例

部品 損傷事例 要因 対策
ヨーク キー溝の陥没 18 ・過大な負荷の作用 ・使用条件の見直し
・適切な荷重の負荷


20230328001811.jpg図18 ヨークのキー溝の陥没

表9 フィッティングヨーク(小判穴ヨーク)の損傷事例

部品 損傷事例 要因 処置
フィッティングヨーク
(小判穴ヨーク)
小判穴の摩耗

19

・小判穴の入口部および奥の摩耗
・トルク伝達面の腐食摩耗による過大すきま
・長時間使用によるトルク伝達面の摩耗
接触面の硬化
肉盛り補修


20230328001911.jpg図19 フィッティングヨーク(小判穴ヨーク)の摩耗

表10 スプラインの損傷事例

部品 損傷事例 要因 処置
スプラインスリーブ/シャフト スプライン部の摩耗 20 ・長時間使用によるトルク伝達面の摩耗 軽度の場合
再使用可
重度の場合
新品に交換



20230328002011.jpg図20 スプラインスリーブのスプライン部の摩耗

ドライブシャフトの損傷事例について、詳しくはこちらをご覧ください。

<カタログ「鉄鋼・産業設備用ドライブシャフト」:ドライブシャフトの損傷事例>

なお、ジェイテクトでは大形ドライブシャフトの点検・補修を受け付けておりますので、ご相談ください。

5. まとめ

今回は、鉄鋼・産業設備用ドライブシャフトの概要、点検および損傷事例をご紹介しました。

1) ドライブシャフトにはユニバーサルジョイント(十字軸タイプ自在継手)が用いられ、原動機の動力を機械に滑らかに伝えます。
2) ドライブシャフトを長く安心してご使用いただくためには、定期点検が必須です。定期点検には、グリース給脂とクロスベアリング固定ボルトの締付トルクとがあり、ジェイテクトの推奨に従ってください。
3) 鉄鋼設備用ドライブシャフトでは、主要部品の分解点検を行います。この分解点検にて確認された損傷には適切な処置と対策を行い、設備の停止や重大事故を防止してください。
4) ベアリングとオイルシールの損傷事例についてもご覧ください。
ベアリングの故障(その1)~ベアリングの故障と損傷~
ベアリングの故障(その2)~ベアリングの損傷とその原因・対策(前編)~
ベアリングの故障(その3)~ベアリングの損傷とその原因・対策(後編)~
オイルシール(その3)~オイルシールの取扱い、密封不具合の原因と対策~

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