軸受形式の選定

軸受形式の選定に際しては、軸受の使用条件を十分に把握することが重要であり、主な検討事項について表3-1に示す。また、表3-2に軸受形式による性能比較を示す。

表 3-1 軸受形式の選定

検討事項選定方法参照
1)軸受取付けスペース 機械の軸受取付けスペースに収まる軸受形式
  • 一般に軸系を設計する際には、軸の剛性と強度が重視されるので、まず軸径すなわち軸受の呼び内径が決定される。ただし、転がり軸受には、多くの寸法系列と多くの形式(図3-1)とがあるので、この中から最適な軸受形式を選定する。
参照:主要寸法
2)荷重 軸受にかかる荷重の大きさ・方向・性質
(軸受の負荷能力は基本定格荷重で表わされ、その値は軸受寸法表に記載している。)
  • 軸受にかかる荷重は変化に富むので、その大小やラジアル荷重のみか、アキシアル荷重は一方向か両方向か、また振動や衝撃の程度などを考慮して最適な軸受形式を選ぶ。
  • 一般に、ラジアル負荷能力は、同じ内径であれば、次の順に大きくなる。
    (深溝玉軸受<アンギュラ玉軸受<円筒ころ軸受<円すいころ軸受<自動調心ころ軸受)
参照:表3-2 軸受形式による性能比較

参照:はめあいの選定
3)回転速度 機械の運転速度に適応できる軸受形式
(軸受に対する限界回転速度の目安としては、許容回転速度で表わしており、その値は軸受寸法表に記載している。)
  • 軸受の許容回転速度は、軸受形式だけでなく、軸受の大きさ、保持器、公差、荷重の大きさ、潤滑方法により大きく左右されるので、このことを考慮して選定する必要がある。
  • 一般に、高速用途に対しては次に示す軸受が多く用いられている。
    (深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受)
参照:表3-2 軸受形式による性能比較

参照:軸受の許容回転速度
4)回転振れ 必要な回転精度を持つ軸受形式
(軸受の寸法公差、回転振れ等は、 JIS などにより形式別に規格化されている。)
  • 工作機械主軸では高回転精度、ガスタービンでは高速回転、制御機器では低摩擦が要求されるなど、これらの場合には、公差等級 5級以上の軸受が必要となる。
  • 一般に、次に示す軸受が多く使用されている。
    (深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受)
参照:表3-2 軸受形式による性能比較

参照:軸受の公差と等級
5)剛性 機械の軸系に必要な剛性を満たすことができる軸受形式
(軸受が荷重を受けると転動体と軌道との接触部に弾性変形を生じる。"高い剛性"とはこの弾性変形量が小さいことを意味する。)
  • 工作機械主軸や自動車終減速装置などでは、軸の剛性とともに軸受剛性も高くする必要がある。
  • 荷重による変形は玉軸受よりころ軸受の方が小さい。
  • 軸受に予圧を与える (負のすきまにする)ことにより、 剛性を高めることができ、 この方法にはアンギュラ玉軸受、円すいころ軸受が適している。
参照:表3-2 軸受形式による性能比較

参照:軸受の予圧
6)内輪と外輪 の相対傾き
(調心性)
軸受の内輪と外輪とに相対傾きを与えるような使用条件(荷重による軸のたわみ、軸・ハウジングの精度不良や取付け誤差)の確認とこれらに適応できる軸受形式
(軸受の許容調心角は、各形式の軸受寸法表の前の小解説に記載している。)
  • 内輪と外輪との相対傾きが大き過ぎると軸受に内部荷重が生じて損傷の原因となるので、この傾きを吸収できる軸受形式を選定する。
  • 一般に許容調心角は次の順に大きくなる。
    円筒ころ軸受<円すいころ軸受<深溝玉軸受(アンギュラ玉軸受)<自動調心ころ(玉)軸受
参照:表3-2 軸受形式による性能比較
7)取付け取外し 定期検査などによる取付け・取外しの頻度や取付け・取外しの方法
  • 取付け・取外しの頻度が多い場合は内輪と外輪とが分離できる円筒ころ軸受、針状ころ軸受及び円すいころ軸受が便利である。
  • テーパ穴の自動調心玉軸受や自動調心ころ軸受はスリーブを用いることによって、取付け・取外しが比較的容易になる。
参照:表3-2 軸受形式による性能比較
a_17_001.png

図 3-1 ラジアル軸受の寸法系列

表 3-2 軸受形式による性能比較

深溝
玉軸受
アンギュラ玉軸受4点接触
玉軸受
自動調心
玉軸受
円筒ころ軸受参照
ページ
単列組合せ複列NU・NNJ・NFNUP・NHNN・NNU
a_18_001.png a_18_002.png a_18_003.png a_18_004.png a_18_005.png a_18_006.png a_18_007.png a_18_008.png a_18_009.png a_18_010.png -



ラジアル
荷重
a_18_012.png a_18_012.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_012.png a_18_012.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png -
アキシアル
荷重
a_18_012.png
a_18_015.png
a_18_011.png
a_18_016.png
a_18_011.png
a_18_015.png
a_18_011.png
a_18_015.png
a_18_011.png
a_18_015.png
a_18_013.png
a_18_015.png
a_18_014.png a_18_013.png
a_18_016.png
a_18_013.png
a_18_015.png
a_18_014.png -
合成荷重 a_18_012.png a_18_012.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_012.png a_18_013.png a_18_014.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_014.png -
振動
衝撃
a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png -
高速回転 a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_012.png a_18_011.png a_18_013.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png 参照:表3-1 軸受形式の選定
参照:軸受の許容回転速度
高精度回転 a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png 参照:表3-1 軸受形式の選定
参照:軸受の公差と等級
参照:潤滑の目的と方法
低騒音
低トルク
a_18_011.png a_18_012.png 参照:表3-1 軸受形式の選定
剛性 a_18_012.png a_18_012.png a_18_012.png a_18_012.png a_18_012.png a_18_011.png 参照:表3-1 軸受形式の選定
内輪・外輪の
傾き
a_18_012.png a_18_013.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_011.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png 参照:表3-1 軸受形式の選定
各軸受寸法表
の前の小解説
内輪・外輪の
分離
a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_017.png a_18_014.png a_18_017.png a_18_017.png a_18_017.png a_18_017.png -

固定側用 a_18_017.png
a_18_015.png
a_18_017.png
a_18_016.png
a_18_017.png
a_18_015.png
a_18_017.png
a_18_015.png
a_18_017.png
a_18_015.png
a_18_017.png
a_18_015.png
a_18_014.png a_18_017.png
a_18_016.png
a_18_017.png
a_18_015.png
a_18_014.png 参照:軸受配列の選定
自由側用 a_18_018.png a_18_018.png a_18_018.png a_18_018.png a_18_018.png a_18_017.png a_18_018.png a_18_018.png a_18_017.png 参照:軸受配列の選定
備考 2個対向
させて使
用。
※DT組
合せは一
方向のみ。
※入れ溝
付きは一
方向のみ。
※非分離
形もある。
-

PDFはこちら

針状
ころ軸受
(ソリッド形)
円すいころ軸受自動調心
ころ軸受
スラスト玉軸受複式
スラスト
アンギュラ
玉軸受
スラスト
円筒
ころ軸受
スラスト
針状
ころ軸受
スラスト
円すい
ころ軸受
スラスト
自動調心
ころ軸受
参照
ページ
単列複列・四列平面座調心
座金付き
a_19_001.png a_19_002.png a_19_003.png a_19_004.png a_19_005.png a_19_006.png a_19_007.png a_19_008.png a_19_009.png a_19_010.png a_19_011.png -



ラジアル
荷重
a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_013.png -
アキシアル
荷重
a_18_014.png a_18_011.png
a_18_016.png
a_18_011.png
a_18_015.png
a_18_013.png
a_18_015.png
a_18_012.png
a_18_016.png
a_18_012.png
a_18_016.png
a_18_011.png
a_18_015.png
a_18_011.png
a_18_016.png
a_18_011.png
a_18_016.png
a_18_011.png
a_18_016.png
a_18_011.png
a_18_016.png
-
合成荷重 a_18_014.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_013.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_013.png -
振動
衝撃
a_18_012.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_012.png a_18_012.png a_18_011.png a_18_011.png -
高速回転 a_18_012.png a_18_012.png a_18_012.png a_18_012.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_012.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png 参照:表3-1 軸受形式の選定
参照:軸受の許容回転速度
高精度回転 a_18_012.png a_18_012.png a_18_011.png 参照:表3-1 軸受形式の選定
参照:軸受の公差と等級
参照:潤滑の目的と方法
低騒音
低トルク
参照:表3-1 軸受形式の選定
剛性 a_18_012.png a_18_012.png a_18_011.png a_18_012.png a_18_011.png a_18_011.png a_18_011.png 参照:表3-1 軸受形式の選定
内輪・外輪の
傾き
a_18_013.png a_18_013.png a_18_013.png a_18_011.png a_18_014.png a_18_011.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_014.png a_18_011.png 参照:表3-1 軸受形式の選定
各軸受寸法表
の前の小解説
内輪・外輪の
分離
a_18_017.png a_18_017.png a_18_017.png a_18_014.png a_18_017.png a_18_017.png a_18_017.png a_18_017.png a_18_017.png a_18_017.png a_18_017.png -

固定側用 a_18_014.png a_18_017.png
a_18_016.png
a_18_017.png
a_18_015.png
a_18_017.png
a_18_015.png
参照:軸受配列の選定
自由側用 a_18_017.png a_18_018.png a_18_018.png 参照:軸受配列の選定
備考 2個対向
させて使
用。
※複式軸受は両方向可能。 ※非分離形もある。 -

PDFはこちら

a_18_011.png
a_18_012.png
a_18_013.png 少しは可能
a_18_014.png 不可
a_18_015.png 両方向
a_18_016.png 一方向のみ
a_18_017.png 適用できる
a_18_018.png 適用できるがはめあい面で軸の伸縮を逃がす必要がある。
解決しない場合

お電話、またはメールにてお気軽に
お問い合わせください。

お問い合わせはこちらから