軸受の取付け

15-3-1 取付け前の注意事項

1) 軸受の準備

軸受はさび止め処理して包装されているので、取付け直前に包装を解くようにする。
また、軸受に塗布されているさび止め油は潤滑性能も良好なため、通常の用途の軸受やグリース封入軸受の場合には洗浄しないでそのまま使用する。しかし、計器用軸受や高速で使用する軸受の場合には、清浄な洗浄油を用いてさび止め油を除去する。この場合はさびが発生しやすいので長時間放置してはならない。

2) 軸及びハウジングの検査

軸及びハウジングを清浄にして、きずや機械加工によるかえりの無いことを確認する。
また、ハウジング内部にラップ剤(SiC,Al2O3など)、鋳物砂、削りくずなどが絶対残らないようにする。
次に、軸及びハウジングの寸法・形状・仕上げ程度が設計図どおりにできているかどうか確認する。
軸径及びハウジング内径は図 15-1 15-2に示すように数箇所の位置で測定する。

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図 15-1 軸径の測定位置

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図 15-2 ハウジング内径の測定位置

その他、軸及びハウジングの隅の丸みの寸法や肩の直角度についても十分検査する。

検査に合格した軸及びハウジングに軸受を組込むときには、その直前にそれぞれのはめあい面にマシン油を塗布しておくとよい。

15-3-2 軸受の取付け方法

軸受の取付け方法は軸受の形式やはめあい条件によって異なる。
一般には、軸回転の場合が多いので、内輪にはしまりばめ、外輪にはすきまばめを適用するが、外輪回転の場合は、外輪をしまりばめにする。
軸受をしまりばめで取付ける方法を大きく分類すると次のようになり、それぞれの取付け方法の詳細を次の表に示す。
『表 15-1 円筒穴軸受の圧入による取付け』
『表 15-2 円筒穴軸受の焼ばめによる取付け』
『表 15-3 テーパ穴軸受の取付け』
『表 15-4 テーパ穴自動調心ころ軸受の取付け』

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参考軸受の圧入又は引抜きに要する力

軸受内輪の圧入又は引抜きに要する力は、しめしろや軸の仕上げ程度によって異なるが、その目安値は次式によって求めることができる。

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式(15-1)(15-2)において、

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抵抗係数ƒkの値

条件ƒk
  • 円筒軸に軸受を圧入する場合
4
  • 円筒軸から軸受を引抜く場合
6
  • テーパ軸あるいはテーパスリーブに軸受を圧入する場合
5.5
  • テーパ軸あるいはテーパスリーブから軸受を引抜く場合
4.5
  • 軸と軸受の間にテーパスリーブを圧入する場合
10
  • 軸と軸受の間からテーパスリーブを引抜く場合
11

表 15-1 円筒穴軸受の圧入による取付け

圧入の方法解説
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(a)プレスの利用(最も一般的)

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(b)ボルトとナットの利用(軸端にねじ穴が必要。)

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(c)ハンマの利用(やむを得ない場合に用いる。)

  • どの方法の場合も、軸受に均一な力がかかるようにするため、下図のような当て金を用いて静かに圧入する。
    このとき、当て金を外輪に当てて内輪を圧入したり、内輪に当てて外輪を圧入してはならない。
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  • 非分離形軸受で内輪・外輪ともにしめしろが必要な場合は、転動体に傷がつきやすいので、右図のように2種類の当て金を用いて、静かに圧入する。このとき、ハンマを用いてはならない。
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(内輪・外輪の同時圧入)

表 15-2 円筒穴軸受の焼ばめによる取付け

焼ばめの方法解説
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(a)油浴で加熱 

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(b)誘導加熱装置 

  • 油の中で軸受を加熱膨張させて軸に取付ける焼ばめ方法は、軸受に無理な力がかからず、短時間で作業が行える。
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(注意事項)

  • 120℃以上で加熱すると軸受の硬さが低下するので、100℃以下で加熱する。
  • 加熱温度は軸受の大きさとしめしろとから図 15-3を参考にして決めることができる。
  • 軸受を油槽の底につけてはならない。金網台やつりかけ道具を用いる。
  • 焼ばめ後、軸受が冷えると軸方向にも収縮するので、内輪と軸の肩との間にすきまができないように軸ナットなどを用いて密着させておく。
  • 誘導加熱装置で軸受を加熱膨張させて軸に取付ける焼ばめ方法は、火や油を使わず電気により短時間で均一に加熱できるので、清潔でしかも能率よく作業が行える。(励磁コイルを内蔵し、通電すると電磁誘導作用により軸受に電流が流れ、軸受自体の抵抗により発熱する。)
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図 15-3 加熱温度と軸受内輪の膨張量

〔備考〕

  1. 太い実線は常温における軸受(0級)と軸(r6,p6,n6,m5,k5,j5)との最大しめしろ値を示す。
  2. 従って、この最大しめしろ値よりも大きい「内輪の膨張量」を得られるように加熱温度を決めればよい。

(例えば、内径90mmで0級の軸受をm5の軸に取付ける場合、このときの最大しめしろ値48μmより大きい膨張量を得るためには図より、室温+40℃になるように加熱すればよいことがわかる。しかし、実際には取付け作業中の冷却も考慮して、さらに20~30℃高く加熱しておくとよい。)

表 15-3 テーパ穴軸受の取付け

取付け方法解説
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(a)テーパ軸への取付け

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(b)アダプタによる取付け

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(c)取外しスリーブによる取付け

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(d)すきまの測定

  • テーパ軸に軸受を直接取付ける場合、軸に油穴・油溝を加工して、軸受とのはめあい面に高圧の油を送り込む(オイルインジェクション)ようにすると、はめあい面の摩擦が軽減されてナットの締付けトルクが小さくなる。
  • アダプタや取外しスリーブを用いて取付ける場合で、軸に肩がなく、しかも正確な位置決めを必要とするときは、クランプを用いて軸受の位置を決めるとよい。
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(クランプによる軸受の位置決め)

  • 軸受の押込みには、ナットが多く用いられており、特殊スパナなどで締付ければよい。また、油圧ナットを用いて押込む方法もある。
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  • 自動調心ころ軸受では表 15-4に示す押込み量を基準にして、ラジアル内部すきまの減少量を調べながら取付ける。

すきまの減少量はすきまゲージを用いて調べる。その測定は、ころを正しい位置に落着かせて、ころと外輪との間にゲージを差込んで行えばよいが、両列のすきまの値がほぼ等しく(ee')なるようにする。
測定個所によっては測定値が異なるので、数箇所測定して平均するのが望ましい。

  • 自動調心玉軸受では、外輪が容易に調心できる程度のすきまを残すように取付ければよい。

表 15-4 テーパ穴自動調心ころ軸受の取付け

呼び内径
d
mm
ラジアル内部
すきまの
減少量 µm
軸方向の押込み量 mm 必要最小残留すきま µm
テーパ1/12 テーパ1/30 C Nすきま C 3すきま C 4すきま
を超え以下 最小 最大 最小 最大 最小 最大
2430 15 20 0.27 0.35 - - 10 20 35
3040 20 25 0.32 0.4 - - 15 25 40
4050 25 35 0.4 0.5 - - 20 30 45
5065 30 40 0.45 0.6 - - 25 35 55
6580 35 50 0.55 0.75 - - 35 40 70
80100 40 55 0.65 0.85 - - 40 50 85
100120 55 70 0.85 1.05 2.15 2.65 45 65 100
120140 65 90 1.0 1.2 2.5 3.0 55 80 110
140160 75 100 1.1 1.35 2.75 3.4 55 90 130
160180 80 110 1.2 1.5 3.0 3.8 60 100 150
180200 90 120 1.4 1.7 3.5 4.3 70 110 170
200225 100 130 1.55 1.85 3.85 4.6 80 120 190
225250 110 140 1.7 2.05 4.25 5.1 90 130 210
250280 120 160 1.8 2.3 4.5 5.75 100 140 230
280315 130 180 2.0 2.5 5.0 6.25 110 150 250
315355 150 200 2.3 2.8 5.75 7.0 120 170 270
355400 170 220 2.5 3.1 6.25 7.75 130 190 300
400450 190 240 2.8 3.4 7.0 8.5 140 210 330
450500 210 270 3.1 3.8 7.75 9.5 160 230 360
500560 240 310 3.5 4.3 8.75 10.8 170 260 370
560630 260 350 3.9 4.8 9.75 12.0 200 300 410
630710 300 390 4.3 5.3 10.8 13.3 210 320 460
710800 340 430 4.8 6.0 12.0 15.0 230 370 530
800900 370 500 5.3 6.7 13.3 16.8 270 410 570
9001000 410 550 5.9 7.4 14.8 18.5 300 450 640

〔備考〕
上表のラジアル内部すきまの減少量はCNすきまの軸受を中実軸に取付ける場合の値を示す。
C3すきまの軸受の場合は上表の最大値を目安にすればよい。

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