はめあいを選定するためには、軸受の使用条件を十分考慮する必要がある。
これを大別すると次のようになる。
- 荷重の性質及び大きさ
- 運転中の温度分布
- 軸受の内部すきま
- 軸・ハウジングの仕上程度、材料及び肉厚構造
- 取付け・取外しの方法
- 軸の熱膨張をはめあい面で逃がす必要性の有無
- 軸受の形式及び寸法
以下これらの事項に関連し、はめあいの選定に関する重要な諸項目について述べる。
1)荷重の性質
荷重の性質には内輪回転荷重、外輪回転荷重及び方向不定荷重があり、はめあいとの関係を表9-1に示す。
表 9-1 荷重の性質とはめあい
回転の区分 | 荷重の方向 | 荷重条件 | はめあい | 代表例 | |
---|---|---|---|---|---|
内輪と軸 | 外輪とハウジング | ||||
内輪回転荷重 外輪静止荷重 |
しまりばめが必要 (k、m、n、p、r) |
すきまばめでもよい (F、G、H、JS) |
平歯車装置、電動機 | ||
不つり合いが大きい車輪 | |||||
内輪静止荷重 外輪回転荷重 |
すきまばめでもよい (f、g、h、js) |
しまりばめが必要 (K、M、N、P) |
静止軸付きの走行車・滑車 | ||
振動ふるい機(不つり合い振動) | |||||
不定 | 回転又は静止 | 方向不定荷重 | しまりばめ | しまりばめ | クランク |
2)荷重の大きさの影響
内輪はラジアル荷重によって半径方向に圧縮されると同時に少し広がり、円周長さが極くわずか長くなる傾向があるので、最初のしめしろが減少する。
しめしろの減少量は次式で求められる。
従って、ラジアル荷重がC0値の25%を超えるような重荷重の場合には軽荷重の場合よりかたいはめあいが必要である。
また、衝撃荷重の場合には、さらにかたいはめあいが必要である。
3)はめあい面の粗さの影響
はめあい面の塑性変形を考慮すると、はめあい後の有効しめしろ は、はめあい面の仕上げによって影響を受け、近似的に次式で表わされる。
4)温度の影響
運転中の軸受温度は一般に周囲の温度より高くなる。また、一般に軸受が荷重を受けて回転する場合、内輪は軸より温度が高くなるので、熱膨張により有効しめしろが減少する。
今、軸受内部とハウジング周囲との温度差をΔtとすると、内輪と軸とのはめあい面の温度差は近似的に(0.10~0.15)Δtと仮定して差支えない。
そこで温度差によるしめしろの減少量Δdtは次式で求められる。
従って、軸受温度が軸より高い場合には、かたいはめあいが必要である。
また、外輪とハウジングとの間では、その温度差や膨張係数の差によって逆にしめしろが増大することがあるから、軸の熱膨張を外輪とハウジングとのはめあい面の間の滑りによって逃がす場合には注意を要する。
5)はめあいによって生じる軸受内の最大応力
しめしろを与えて軸受を組み込んだ場合、軌道輪は膨張あるいは収縮して応力が生じる。
この応力が大きすぎると、軌道輪が破損することがあるので注意が必要である。
はめあいによって生じる軸受内の最大応力は表9-2に示す式で求められる。
目安値としては、しめしろの最大を軸径の1/1000以下、又は表9-2の計算式における最大応力σを120MPa以下にするのが安全である。
表 9-2 はめあいによって生じる軸受内の最大応力
軸と内輪 | ハウジング穴と外輪 |
---|---|
〔備考〕上式は軸・ハウジングが鋼の場合である。鋼以外のハウジングを使用する場合はJTEKTにご相談ください。
6)その他
とくに精密さが必要な場合には、軸及びハウジングの精度を上げる。一般に、ハウジングは軸にくらべて加工が困難であり精度も良くないので、外輪とのはめあいをゆるくする方がよい。
中空軸及び肉厚の薄いハウジングを用いる場合には、普通よりもかたいはめあいを必要とする。
割り形のハウジングを用いる場合には、外輪とのはめあいをゆるくする。
アルミ鋳物などの軽合金製ハウジングの場合には、普通のものよりもいくらかかたいはめあいにする必要があるので、その際は、JTEKTにご相談ください。