取付けが完了したら、それが適正であるかどうか調べるため、試運転検査を行う。
小形の機械ではまず手回しで回転調子を調べ、次のような異常がなければ動力運転による検査を行う。
- 引っかかり
異物の侵入、転がり部分の傷などに起因する。 - 過大トルク(重い)
密封装置の摩擦、すきま過小、取付け誤差などに起因する。 - 回転トルクむら
取付け不良、取付け誤差などに起因する。
手回しができない大形の機械では、無負荷で始動し、直ちに動力を切って、惰走運転する。
このとき、異常な振動や音がなく、円滑に回転していることを確認してから動力運転に入る。
動力運転は、無負荷・低速で始動し、徐々に所定の条件まで上げるようにする。動力運転検査は、主に音響、温度上昇、振動によって判断し、『表 15-5 異常音とその原因・対策』、 『表 15-6 異常な温度上昇の原因・対策』に示すような異常が起これば、直ちに点検する。場合によっては、軸受を取外して点検する必要がある。
表 15-5 異常音とその原因・対策
異常音の種類 | 推定原因 | 対策 | |
---|---|---|---|
周期性がある | きず音(リベット打ち音に類似) さび音(リベット打ち音に類似) 圧こん音(濁ったサイレン音に類似) |
軌道面のきず 軌道面のさび 軌道面の圧こん |
取付け方法・洗浄方法・さび止め方法の改善、軸受の交換 |
剥離音(ハンマで叩いているような大きな音) | 軌道面の剥離 | 軸受の交換 | |
周期性がない | ごみ音(ガリガリという音、かわず音とも呼ぶ) | 異物の侵入 | 洗浄方法・密封装置の改善、きれいな潤滑剤の使用、軸受の交換 |
はめあい音(ゴロゴロという音やハンマで叩いているような音) | はめあい不良、過大な軸受すきま | はめあい及び軸受すきまの検討、予圧量の検討、取付け精度の改善 | |
きず音、さび音、剥離音 | 転動体のきず、さび、剥離 | 軸受の交換 | |
きしり音(グリース潤滑の円筒ころ軸受で冬場や低温時に発生しやすい) | 潤滑不良に起因する場合は潤滑剤の検討を必要とするが、一般的には、軸受への悪影響はないので、そのまま使用してもよい。 | ||
その他 | 異常に大きい金属音 | 異常荷重 取付け不良 潤滑剤の不足や不適 |
はめあい・すきまの検討、予圧の調整、軸・ハウジングの加工精度や取付け精度の改善、密封装置の改善、潤滑剤の補給、適正な潤滑剤の選定 |
表 15-6 異常な温度上昇の原因・対策
指定原因 | 対策 |
---|---|
潤滑剤の過多 | 潤滑剤の適量化、硬めのグリースの選定 |
潤滑剤の不足 | 潤滑剤の補給 |
潤滑剤の不適 | 適正な潤滑剤の選定 |
異常荷重 | はめあい及びすきまの検討、予圧の調整 |
取付け不良 (摩擦過多) |
軸・ハウジングの加工精度及び取付け精度の改善、はめあいの検討、密封装置の改善 |
軸受の音響検査は、一般に聴音棒を使用して調べる方法もあるが、音の振動を検出して異常の有無を検査する装置や音響エネルギーを検出して調べる異常診断装置を利用する方法もある。
軸受の温度検査は、一般にはハウジングの温度によって推定できるが、油穴などを利用して直接、軸受外輪の温度を測定するのが最も確実である。
軸受温度は、運転開始後、徐々に上昇して、異常がなければ1~2時間後に定常状態になる。
急激な温度上昇や異常に高温になる場合は、何らかの異常があると考えられる。