軸受はラジアル荷重とアキシアル荷重との合成荷重を受ける場合が多く、またその大きさが変動するなどいろいろな条件で使用される。
従って、軸受の受ける実際の荷重と基本動定格荷重とを、直接比較することはできない。
こうした場合、実際の荷重及び回転速度のときと同じ寿命となるような大きさと方向が一定の、軸受中心を通る荷重に換算し比較検討する。
この換算した仮想荷重を動等価荷重(P)という。
5-4-1 動等価荷重の計算
大きさと方向が一定の合成荷重を受けるラジアル軸受及びスラスト軸受(α≠90°)の動等価荷重は次式で求められる。
- 単列ラジアル軸受でFa/Fr≦eの場合はX=1,Y=0とする。従って動等価荷重はPr=Frとなる。
eはFa/Frの限界値を示し、その値は軸受寸法表に記載している。 - 単列アンギュラ玉軸受及び円すいころ軸受では、荷重を受けると、図5-11に示すように軸方向の分力(Fac)を生じるので、通常2個対向させて使用する。
この軸方向の分力は次式で求められる。
これらの軸受にラジアル荷重と外部からのアキシアル荷重(Ka)が作用する場合の動等価荷重の求め方を表5-9に示す。
図 5-11 軸方向の分力
- 接触角α=90°のスラスト玉軸受は、アキシアル荷重だけを受けるので、Pa=Faとなる。
- スラスト自動調心ころ軸受の場合は次式により求められる。
表 5-9 単列アンギュラ玉軸受又は円すいころ軸受を2個対向させた場合の動等価荷重の計算
軸受配置 | 荷重条件 | 軸受 区分 | アキシアル荷重 | 動等価荷重 | |
---|---|---|---|---|---|
背面組合せ | 正面組合せ | ||||
軸受A | |||||
軸受B | - | ||||
軸受A | - | ||||
軸受B | |||||
軸受A | - | ||||
軸受B | |||||
軸受A | |||||
軸受B | - |
〔備考〕
1.運転中、内部すきま及び予圧が0の場合に適用する。
2.ラジアル荷重は上図の矢印と逆の方向にかかった場合も正とする。
5-4-2 荷重が変動する場合の平均動等価荷重
軸受に作用する荷重の大きさや方向が変動する場合には、実際の変動条件における軸受寿命と同じ寿命を与えるような平均動等価荷重を求める必要がある。
各種の変動条件における平均動等価荷重Pmの求め方を(1)~(4)に示す。
また、(5)に示すように静止荷重と回転荷重とが同時に作用する場合の平均動等価荷重は、式(5-39)で求めることができる。
(1)~(4)において、
(参考)平均回転速度nmは次式で求められる。
(1)段階的な変動
(2)単調な変動
(3)正弦曲線的な変動
(4)正弦曲線的な変動(正弦曲線の上半分)
(5)静止荷重と回転荷重が同時に作用
図 5-12 ƒm係数